2009年3月22日日曜日

【レビュー】『人はなぜ形のないものを買うのか』

先日のメタバースフォーラム関係の書籍第2段です。

野島美保『人はなぜ形のないものを買うのか』(エヌティティ出版)
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先日私も出席したメタバースフォーラム第2回勉強会で「ビジネスとしてみる仮想世界:仮想世界の普及とマネタイズを考える」というテーマでお話しされた野島先生の本です。フォーラムで話された内容もたっぷり盛り込まれていますので、是非ご一読をお薦めします。

本書全体のテーマは、マーケットというものが物販型からサービス型へ、インターネットもWeb2.0、仮想世界へと移行していく中で、ビジネスとして成立するための新たな収益モデルを探ることにあります。簡単に言うと、セカンドライフ儲かる、と言っても、今までと同じ感覚でビジネス参入しても無理がありますよ、ということですね。

では、どのような収益モデルを設定すべきなのか、そのことをオンラインゲームのユーザー心理に切り込み、心理学的側面と経営学的側面の両方からアプローチしているのが本書の特徴と言えるでしょう。

そのアプローチを可能にしているのは、著者自身がオンラインゲームにはまっていて、オンラインゲームに対する共感、自身の内面的体験と、研究者としての冷静な分析的視点との両方を持ち合わせているからであり、それ故、その洞察や分析は強い説得力を持っているのです。一体、「セカンドライフはダメになった、失敗だ、終わった」と言う論客の多くが、その文章を読む限り、セカンドライフをやったことないのではないか、と思わせるものがあります。セカンドライフのような新しいものが出て来たときに、それを体験することなしに分析、批評などできるものではありません。

ここであまり詳しいことは書けませんが、新しい収益モデルを探る中で、本書は実に重大な、示唆に富む事実を明らかにしています。それは、結局、オンラインゲームや仮想空間にはまる人たちがプレイし続ける理由ですが、それは「本当の自分」という自己アイデンティティであり、豊かな人間関係であり、自分の居場所であり、まじめにやればやっただけ報われるという公平な世界なのだ、ということです。裏を返せば、私たちが生きる現実の社会が、このような、殆ど存在に関わるような重要な価値を失ってしまったということでしょう。だとすれば、仮想世界の豊かな発展ということが私たちの現実の生活にとっていかに重要なことでしょう。

今挙げたような価値は、いずれも内面的で、しかも目的性を持たないものです。お金が儲かる、便利だ、というのは後回しなのです。セカンドライフはその点が強調されてメディアに伝えられたことが日本での低迷につながったと思われます。人間関係に目的も何もありません。何も話さなくても、ただ一緒にいるだけで楽しい。それが豊かな人間関係なのではないでしょうか。

そんなわけで、また今日も僕らはセカンドライフにログインするのです。別に何の目的もなく、ただ、大事な友人たちと時間と空間を分かち合うために。。。

とにかく、お薦めです。w
セカンドライフと言わず、コンテンツビジネスを考えている方、携わっている方には必読です!



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