2010年1月8日金曜日

【翻訳記事】「アバター」、そしてインスピレーション

映画「アバター」を製作したのが
あの「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督というのは
実に納得できることだと思います。
「タイタニック」がすごかったのは、
もう僕らが決して触れることのできない豪華客船のあらゆる場所を
再現して、招待してくれたことにあります。
あの映画を見ることで、僕らは正にあの船に乗る経験をしたのであり、
華麗なダンスパーティーの場に居合わせたのであり、
そして、最後、あの船が沈んでいく現場にも居合わせたのでした。

僕は前の日記で映画「アバター」に「没入していた」
という表現を使いましたが、
正に、あの映画では、最後の戦闘シーンも勿論すごいのだけれど、
あの不思議な惑星の不思議な自然に包まれ、
その現場を体験したのでした。
それが3Dになるとますます自分たちがそこにいるという感じが強い。
現実にいるのとは全く異なるイマジネーションの世界へ
見るものを誘うというのは、正にSF映画の醍醐味と言えます。

ところで、昨年末、この映画を見たフィリップが
公式ブログに記事を書いていましたので、ここに訳出しておきます。
セカンドライフという仮想世界の産みの親である彼が
この映画に何を見、感じたのか、大変興味がありましたので。
例によって非公式な翻訳であり、
誤訳等を含めた文責は全て Hiroshi Kumaki にあります。
原文はこちら。

https://blogs.secondlife.com/community/features/blog/2009/12/29/avatar-and-inspiration

     *   *   *

   「アバター」、そしてインスピレーション

みなさん、こんにちは。この度、映画の「アバター」を見る機会がありました。そこで、この映画は仮想世界で活動している私たちみんなにとって、インスピレーションを与えてくれるものだということを少しお話ししたいと思います。

アンドリューと私とで1999年にセカンドライフのことを始めた時に、幻想的なデジタルの森のことをよく話したものです。たくさんのシミュレータのパワーを組み合わせて、そして勿論私たちが当時書いていたプログラムのパワーを組み合わせて、本物の生態系を有する驚きに満ちた森を創ることを考えるのが大好きでした。その森を歩きまわってみれば、これまでどんな時代に生きた人も見たことのないようなものを見、経験するのです。私はこのことを考えずにはおられず、また考えてみるだけでもワクワクするものでした。何度となく、その森の姿を文字通り夢の中で見たことがあるのです。

後に、そして特に最近、何故自分はセカンドライフや仮想世界をこれほどまでに重要なものと考えているのか説明しようとして、その核心に触れようとする時、しばしばこのデジタルの森という考えに戻っていくのでした。というのは、デジタルな世界が重要なのは、その世界に私たちが知っている世界を「シミュレート」しようとしているからではなく、その世界に私たちがこの地球上では決して見ることのできないものを生み出し、経験しようとしているからなのだと私は考えるからです。そう、今現在、私たちの想像力の中にしか存在しないものをです。もっと言うと、私たちは現実世界のものを緻密にリアルに再現することに留まらず、遥かその先に向かっていこうとしているのです。将来、デジタルの熱帯雨林は、今のアマゾンより1000倍も豊かな植物や生き物で満たされていることでしょう。何故なら、私たちは究極的には、自然が生み出せる以上のシミュレーションとレンダリングを可能にするプロセッサのパワーを手に入れ、発揮することができるからです。

映画「アバター」は未来を見る鏡です。宙に浮く山々や、現実にはあり得ない空や大地、そして想像もできないような生き物たちに溢れた驚くべき惑星を私たちに見せてくれます。今はまだ私たちにとってそれは遠い世界ですが、10年もしないうちに仮想世界がこの映画でみなさんが見たようなグラフィックスやシミュレーションを提供してくれることはほぼ間違いありません。そうなるとどれだけすごいことになるでしょうね。そこに辿り着くにはどれだけ大変な仕事が次から次へと私にのしかかって来るでしょうか。それでも、そうしたものを目にすることはどれだけ私を幸せにし、希望で一杯にしてくれることでしょうか。今はまだ、映画のスクリーンでしか見られない世界ですけどね。

                     2009年12月28日
                     フィリップ・リンデン

No response to “【翻訳記事】「アバター」、そしてインスピレーション”

Leave a Reply