2010年12月1日水曜日

作曲家の思い〜メゾ・スタッカートのこと

12月になりました。
今月は2回にわたるパリ公演や自分のライブも予定されていて
なかなか忙しい年末になりそうです。
そんな中、YMO公演に向けて打ち込みをやっていて
ふと気づいたことがあったので備忘録を兼ねて書いておきます。

クラシックの楽譜というものは、そもそも今のように
録音機材が発達していない時代に、
演奏家に演奏内容を伝えるものなんだけれども、
その楽譜の細かさというのは、作曲家がどれだけその作品を
自分の思い通りに演奏してほしいか、ということと関係しているように
思うのですね。

例えば、バッハの場合は殆ど指定がない。
ものによっては楽器の指定すらない。
これは、演奏する人が自分のセンスで判断しなさい、
という、それ自体が練習になっているとも言えます。
中には、ヘミオリアと言って、8分の6拍子で
8分音符が6つ並ぶ音型があり、
これは3拍のフレーズ×2で演奏するか、
2拍のフレーズ×3で演奏するかで
全く表情が変わってくるというものもあります。
しかし、演奏家がどう演奏したとこで、
どこまでもバッハな響きがするのがこの人のすごいところ。。。

一方、ベートーヴェンやドビュッシーは細かいですね。
この人たちはまじめですものね〜。
いろいろと演奏上の記号があちこちに出て来ます。

演奏上の記号で有名なものにスラーとスタッカートがありますね。
スラーは音符をかっこで結ぶもので、
これらの音符は途切れないように続けて、
つまりレガートで演奏してね、という意味。
打ち込み的にはその音符の100%の長さを入力することになります。
ということは、これ以外はノン・レガート、
約85%〜95%のところで入力するのが普通なんです。
一方、スタッカートはその音符を短く切る、ということ。
一般的には50%くらいでしょうが、テンポによって
適切な長さは変わってきます。

ところが、先日ベートーヴェンの楽譜を見ていたら
「メゾ・スタッカート」なるものが出て来ました。
これは、スタッカートがついている上にスラーで結んである。
スタッカートとスラーって全く逆なのに、なんで一緒に書かれてるの?

何のことはない、普通にノン・レガートで演奏すればいいのです。
ノン・レガートの場合は演奏記号がつかないのが普通です。
が、レガートが全体の雰囲気を占める曲の中で
何も記号をつけないとノン・レガートにしたいところも
レガートで演奏されてしまうかもしれない。
そこで作曲家たちは考えたわけですね。
ここはレガートじゃなくて、音符を切ってほしいんだけど
スタッカートみたいに短くなくて、、、
そこで生まれたのがこのメゾ・スタッカートという不思議な記号、
というわけなんです。

随所にそんな記号を書き込むベートーヴェンの思いを感じると
ふっと笑いたくもなってくるのですが、
楽譜を音にするというのはそんな作曲家の思いを現実のものにすること。
さて、どんな音になりますやら、楽しみにしていて下さい。

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