2010年12月23日木曜日

「第九」を語る(5)〜第三楽章

今回の企画を行うに当たって、「重大発表」としなければならないほど、
「第九」を打ち込みでやるのは難しいと考えていました。
それは、声を伴う大規模な第四楽章もそうですが、
実は、僕が一番難しいと考えていたのがこの第三楽章だったのです。

この楽章は、癒しの響きに満ちていて、
本物の演奏を聴いていて、まず眠くならなかったことがない。w
メロディをとるヴァイオリンの艶やかな響き、
生の木管楽器だからこそ出せる美しい和音、
これをシンセで表現するのは、まず無理、というのが
正直な気持ちなのでした。
(オケをシンセで表現すること自体が無理なんだけど、特に、ね。w)
実は、この曲は、僕がベートーヴェンが書いた中で
最も美しい曲と考えているものなので、
それだけに手をつけるのが怖かったのです。^^

その豊かな響きを再現するために僕がとったのは、
思い切りテンポを落とすということ。
BPM=36ですよ。w
安いシーケンサーなら殆ど下限のテンポ。
おかげで、もともと遅いフルトヴェングラーよりも
更に遅い19:56という、第四楽章に匹敵する長さになりました。
実はこの楽章、第二楽章とは逆に、
たった150小節ちょっとしかないんだけどね。w

この曲は、最初にファゴットとクラリネット、
そしてチェロ、ビオラ、第二バイオリンによる短い前奏があって、
そのあと第一バイオリンによって主題のメロディが呈示されます。
このメロディは、この遅いテンポの中で
16小節もあるという気の遠くなるようなもの。
まぁ、それでもよくよく聴いてみると、
出だしはどこか「悲愴」のピアノ・ソナタの第二楽章に
似ているような気もします。
と言えば、そのメロディの美しさがわかるかな?

曲全体を通してみると、
第一バイオリンが主にメロディを演奏する、
というか、殆ど第一バイオリンのソロが目立ちます。
そこを、木管楽器群とホルンが絶妙なハーモニーで彩っていきます。
また、ソロを引き立てるためにか、
第二バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスは
ピチカートという、弦を弾く奏法が多用されています。
一小節でピチカートと弓で弾く部分が入れ替わったりするので、
練習でも、弦の演奏者たちは必死にHUDを操作しています。
昨晩の練習では、皆確実に慣れてきたみたいで
思わずニヤッとしてしまいました。
いや、20分近く、集中して自分の楽器の音を聴いて
HUDを切り替えるというのは、ホント大変なことですよ。

練習では、その弦のピチカートで3連でポンポンポン、と
静かに鳴らす部分があって、
これを僕は夜の鳥がチチチと鳴いているようだと表現しました。
第四楽章で出て来るこの楽章へのコメントを考えると、
これはきっとベートーヴェン流の夜想曲、ノクターンなのでしょう。
ということは、勿論、夜を共にする男女を暗示していますね。
厳しい人生の中にあっても、愛する人が側にいることが
どれだけ心の支えになることでしょうか。
そんな、甘い、やすらぎのひとときを表現できると最高なんですけどね。
公演当日、その辺りもお楽しみにしていて下さい。^^ 

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