2016年12月11日日曜日

【レビュー】ウェンディ・カーロス『時計仕掛けのオレンジ』

第九の話を書いたのでこれに関連して少々。
実は、僕がベートーヴェンの第九を聴いたのが中一の時で、
その年の冬休みの音楽の宿題で第九を聴くというのがあったのです。
で、FMやテレビの番組をチェックしていて、
小澤征爾さんが新日フィルを振るという番組があったので
それで見たのが第九を意識して聴いた最初になります。
テレビでは、コンサート本編だけでなくて、
小澤さんの練習風景から追いかける構成になっていて、
もうその厳しくも熱い練習風景にすっかりこの人を好きになった次第。

がしかし、実際には第九の曲、全曲ではないけれど、
その年の夏に既に耳にしていたのです。
同じ音楽の先生が、夏休みに何かクラシックを聴いて
鑑賞文を書いてきて下さい、という宿題を出していて、
ちょうど夏休みにFMで5日間にわたって
ベートーヴェンの特集をやっていたので、
これこれ、と思って聴いていたのですが、
実はその番組の中でのことなのですよ、
シンセサイザーという楽器を初めて知ったのは。
そこで紹介されたのが、冨田さんの『惑星』から「火星」と
ウェンディ・カーロス(当時はウォルターと言ってましたね)の
ベートーヴェンの第九の第4楽章だったのですよ!
つまり、僕にとっての第九はカーロス版が初体験だったというわけ!

その頃はカーロスのピコピコしたいかにも電子音という感じは
あまり好きになれなくて、寧ろ壮大な冨田さんの方に
心を寄せられる部分があったのだけれど、
2004年に音楽活動を再開してから、
やはりシンセサイザー音楽の草分けである
ウェンディ・カーロスをちゃんと聴かないとね、とか思って
『スイッチト・オン・バッハ』だけはCDで買ってたんですが、
併せてもう一度聴きたいと思っていたベートーヴェンの方は
なかなかCDショップに売ってないんですよね。

それもそのはずで、実はカーロスのベートーヴェンには
いろいろと曰くがあるようなのです。

まず最初にワーナーから出ている映画のサントラ盤。
これにはカーロスもかなり不満で、LPという制約もあって
制作されたトラックの殆どが使用されなかったばかりか
使用されているものもカットされた箇所があるのだとか。
おまけに、マスターからではなく本当にサウンドトラックかららしく
音質もイマイチなのだとか。。。
僕ももうちょっとでこのバージョンを買うところでしたよ。^^;

次に出たのが、『スイッチト・オン・バッハ』と同じ
CBSからリリースされたもので、当時の日本盤のタイトルは
『スイッチト・オン・ベートーヴェン』。
「スイッチト・オン」シリーズということを意識したタイトルですが、
カーロスのHPのディスコグラフィにそのタイトルはなく、
原題はやはり『Clockwork Orange』のようです。
これは一応カーロスの監修の元に制作され、
LPの制約で一部の曲はカットせざるを得なかったものながら、
カーロスはまずまずの出来と考えていたようです。
なので、僕も欲しかったのはこのバージョンなのですが、
結局CBSからCD版は出ないまま今に至っているようです。

そこで!
とうとうカーロスが全曲をリマスタリングして
1998年に出したのが今回僕が手にいれたバージョンになります。



オリジナル・マスターからデジタル・リマスタリングされたもので、
CBS版でカットされた2曲のボーナストラックを含め全10曲、
カーロスのクラシカルなシンセ・ワールドにどっぷり浸れます。
そう、タイトルにも「完全版」てありますでしょ?
あと、ジャケットも、「時計仕掛けのオレンジ」の映画ポスターの
パロディ版みたいで楽しいですよね。
ワーナーのサントラ盤は映画と同じアレックスがナイフを持った絵、
これに対してカーロスの版はベートーヴェンが試験管を持ってる!
まるでベートーヴェンが実験してどこかアブナイ
シンセ版の第九が出来上がったようではないですか!

いやホントに、中一の時以来何十年ぶりに聴きましたよ、
カーロスの第九。w
これこれ、これこそ僕がシンセに興味を持つことになったあの音。
YMBのために僕も打ち込みをやってますからね、
何か新たな気持ちで、なるほど〜、ここのところを
こんな風にアレンジしてるのか、って真剣に聴いてます。w

因みに、このCDのことを知ったのは
次のカーロスの公式ホームページでのこと。

http://www.wendycarlos.com/discs.html

「Click this CD to audition and buy」のリンクをポチッと押して
アメリカのアマゾン経由で比較的安く購入しました。
上にリンクした日本のアマゾンのサイトでは
とんでもない値段がついてますよね。^^;
ヤフオクとかも含めて、日本の中古市場でも
かなり高額で取引されているようですので、
安く手に入れる機会があったら是非聴いてみて下さい。
明らかに有名な『スイッチト・オン・バッハ』の先を行っていて、
この時代にこんなことやってたんだなぁ、と、
この草分け的存在の方の偉大さを改めて感じさせる1枚です。

No response to “【レビュー】ウェンディ・カーロス『時計仕掛けのオレンジ』”

Leave a Reply