2017年1月22日日曜日

【iPhoneネタ】 日国さんが来た!〜今ハマってるiPhoneアプリ

いやぁ、遂に来ましたねぇ!
毎週 iPhone の App Store で「辞書/辞典/その他」のカテゴリを
チェックしては出て来ないかなぁ、と待っていたんですよ。
そして先週、とうとうリリースされましたよ、
小学館『精選版・日本国語大辞典』が!
何故そんなに興奮しているのかというと、
これまできちんと調べ物をできる国語辞典が
アプリでは出ていなかったからなんです。。。

https://itunes.apple.com/jp/app/jing-xuan-ban-ri-ben-guo-yu/id1178443424?mt=8

辞書というものは国語辞典でも英和辞典でも普通に出回っていて
皆さんも電子版をスマホに入れているか、入れてなくても
家に1冊くらいはお持ちだろうと思います。
が、意外と知られていないのが、
辞書なるものは言葉の意味を並べる順番で
大きく2つのタイプに分かれるということ。
一つは実用辞典とでも言ったらいいのか、
今よく使われている意味、つまり語義が使用頻度順に意味が並ぶもの、
そして今一つは学習・研究辞典とでも言えるでしょうか、
語義を歴史的に使われてきた順番で並べていて、
最初から読んでいくとどのように意味が変わってきたか、
更にその用例が実際の古典から選ばれている場合、
それぞれの意味がどの時代で使われ始めたかがわかるというものです。

書籍版で売れている、みなさんもよく使うような辞典の殆どが
現在では iPhone のアプリになっています。
例えば次のようなものです。

『広辞苑』
『大辞林』
『大辞泉』
『岩波国語辞典』
『新明解国語辞典』
『明鏡国語辞典』

実はこれらのうち、『広辞苑』を除いて全てが実用辞典、
使用頻度順に語義が並んでいます。
なので中学だったか高校の時に初めて父親が
『広辞苑』を買ってくれて引いた時に面食らいましたよ。
いきなり万葉集とか平安時代とかの意味が出て来るんですもの。w
その頃は自分の知りたい意味に辿り着けなくて
難しい辞典だ、と敬遠してました。^^;
しかし、大人になってくると、辞書を調べるのは
言葉の意味がわからないというよりも、
知ってる言葉についてその背景を知りたい時の方が多くなってきます。
例えば、時々まるで逆の意味を持つ言葉に当たったりしますよね。
そういう時、何故そうなのかは歴史順の方が意味の変遷がわかります。
この歴史順で『広辞苑』の他に有名なものは次の2つです。

『新潮国語辞典—古語・現代語』
『日本国語大辞典』(小学館)

これまでこの何れもアプリにはなってませんでした。
そもそも『日本国語大辞典』は全20巻という大部なもので、
一般的には1冊ものでコンパクトな『新潮国語辞典』の方が
普及していて使っている方も多いでしょう。
この辞典は用例をできるだけ現存する最古の文献から選んでいて、
それぞれの意味が使われ出した年代がわかるようになっている
とても便利なものです。
なので、この2つの何れかがアプリ化されるのを
首を長くして待っていたのですよ。
というのは、同じ歴史順でも『広辞苑』ではちょっと不十分、
本格的にものを調べる時は図書館で『日国』に当たってましたから。

その『日国』がさすがに20巻の完全版ではないものの、
そのエッセンスを3巻にまとめた「精選版」でアプリになったわけです!
しかも、2017年1月31日まで4,800円の特価での提供です。@@
実は、『日国』はオンライン版が出てますが、これを使うには、
年1万円以上の会費を支払う必要があります。
なのでこれがどれだけ破格の値段なのかということですよ。

例えば、以前「がんばれ日本」と「がんばろう東北」で気になって、
「頑張る」について調べたことがあります。
ネットで調べたらこれに関する情報を提供しているページは1つだけ、
その他何百というページで「頑張る」の語源について触れていますが、
全てその1つのページからのコピペのようです。
というのは、元のページには「江戸時代から使われはじめた」
という意味の記載があるものの、一体江戸時代のいつ頃、
具体的にはどんな文献に出てるの? ということはわかりません。
そしてその他の何百のページにもその情報はないからです。

ここでアプリの『広辞苑』を引いてみましょう。

170122b.jpg

歴史的な意味に並んでいるのでしょうが、
いつの時代その意味が使われ出したのかわかりませんし、
用例も「作文」のようですよね。^^;

これを、『精選版・日本国語大辞典』で引くと、

170122c.jpg

この通り、浄瑠璃の「軍法富士見西行」で使われたことだけでなく、
1745年という年号までズバリ入っているわけです。
このSSには出ていませんが、このあとずっと読んでいくと、
目を見張る、からじっと監視する、じっと居座る、
更に、その場を持ちこたえる、という風に転じ、
私たちが普通に使う「頑張る」の意味になってきたことがわかります。

(因みに『広辞苑』は「我に張る」が転じたという説をとってますが、
 音声学的には「ガニハル」が「ガンバル」に変化するのは難しい。
 寧ろ、『日国』に参考情報として記載されている「我張る」の方が
 「ガバル」→「ガンバル」と変化しやすいと考えます。)

『日国』の完全版では「頑張る」についてもっと用例がありますが、
この精選版の記載だけでも十分な情報は得られます。
そんなわけで、『日国』に当たるために図書館通いをしてた僕には、
これを iPhone に入れて持ち歩けるというのは、
大変な驚きであり、大変な喜びというわけです。
日本語の語源とか成立過程について知りたいという方には
とってもお勧めな辞書アプリです。

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