2021年8月13日金曜日

【翻訳記事】The Beatles: One After 909

 最近寝る前によくビートルズを聴いている。
レズデーライブの時に話したように、
今アルバムを準備していることとも関係しているのだが、
やはりビートルズの曲というのは初期のロックンロールから
後期の凝った作りの作品まで、いろいろと刺激を与えてくれる。

そんな中で前から不思議な歌詞だと思っていたのが
アルバム Let It Be に入っている "One After 909" と言う曲だ。
全体は自分に愛想を尽かした彼女が街を出て行く、
でも主人公の自分はそれが耐えられずに彼女を追いかけ
同じ列車に乗ろうとする、というストーリーだ。
なんだけれども、不思議だと思っていたのは、
途中に挟まれる次の部分だ。

I've got my bag, run to the station
Railman said "You've got the wrong location"
I've got my bag, run right home
Then I find I've got the number wrong

"the wrong location" とは違う駅ということだろう。
イギリスの場合は特に首都ロンドンが顕著だが、
路線によって駅が違うのだ。
日本の場合は東京駅に行けば東北本線でも東海道本線でも
中央本線でも乗ることができるが、
例えば東北本線なら上野、東海道なら品川、
そして中央本線なら新宿に行かないといけない、
そういう状況なのです。
これはビートルズ若かりし頃の曲なので舞台がリバプールだとすると
今は長距離はライムストリート駅に集約されてるとしても
当時はまだセントラルやエクスチェンジも稼働してたでしょう。
そういう背景を考慮する必要がありますね。

で、問題は次の "the number"。
ビートルズの歌詞で "number" と出て来ると大抵は「電話番号」。
なんだけれども、ここは勿論そうじゃない。
基本的には列車の番号「909」を表してるように見えます。

そこで、タイトルに戻るわけです。
いろいろ調べると作曲者のジョンが「9」に拘りがあったらしい。
そこで、その「9」をモチーフにした語呂合わせでもあり、
謎かけでもあるような曲を作ったのではないか。。。
そう、実はこれはなぞなぞの歌なのだ。

彼女は自分に愛想を尽かして自分から逃げようとしてる
でも当然自分はしつこく彼女に迫る、
彼女としては仕方なく自分が乗ろうとしてる列車を教える
それが "One After 909" なのだ。
これは、そう聞かされたら普通に思うのは
「9時9分の次のやつ」という意味だ。
だから時刻表で9時9分の列車を調べて、
同じ路線の次の時刻の列車を探せばいい。

が、慌てに慌ててる自分が駅に飛んでって
「9時9分の次の列車は何時にどこの番線ですか?」と訊いたら
「そんな列車はないね。違う駅じゃないですか?」と言われる。
そこでまたまた慌てて家に戻り、彼女のメモだか
或いは時刻表だかとにらめっこする。
そこではたと気づくのだ。
"One After 909" は「909の次の数字」とも解釈できる。
つまり 909 + 1 でそれは 910 だ。
彼女は、9時9分の次の列車に乗るのではなく、
正に9時10分の列車に乗るつもりなのだ。
それが "Then I found I've got the number wrong"、
つまり「僕は数字の解釈を間違えてたことに気づいた」なのだ。
だからこそこの後に "Well"=「そうかいそうかい」と叫ぶのだ。w
そして主人公の僕は見事9時10分の列車に乗り込み
彼女を見つける、そんなストーリーなのだ。

というわけで、いろんな人がネット上で和訳を試みてるけど
多分上記のような前提で書かれているものはなさそうなので
敢えてここで Hiroshi 訳を披露させて戴きます。

     *   *   *

One After 909

words & music by Lennon &  McCartney

My baby said she's travelling on the one after 909
I said move over honey I'm travelling on that line
I said move over once, move over twice
Come on baby don't be cold as ice
Said she's travelling on the one after 909

I begged her not to go and I begged her on my bended knees
You're only fooling 'round, only fooling 'round with me
I said move over once, move over twice
Come on, baby, don't be cold as ice
Said she's travelling on the one after 909

I've got my bag, run to the station
Railman said "you've got the wrong location"
I've got my bag, run right home
Then I find I've got the number wrong

Well, she said she's travelling on the one after 909
I said move over honey I'm travelling on that line
I said move over once, move over twice
Come on, baby, don't be cold as ice
She said she's travelling on the one after 909
 
I've got my bag, run to the station
Railman says you've got the wrong location
I've got my bag, run right home
Then I find I've got the number wrong

Well, she said she's travelling on the one after 909
I said move over honey I'm travelling on that line
I said move over once, move over twice
Come on baby don't be cold as ice
Said she's travelling on the one after 9-0
Said she's travelling on the one after 9-0
Said she's travelling on the one after 909

Oh, Danny boy, the old savannah calling...

<対訳>

あの娘は9時9分の次のやつで出てくってんだ
僕は言ったさ 自分もそれに乗るから席空けといてって
横を空けて もちょっと空けて って言ったのさ
ベイビー 頼むからそんな氷みたいに冷たくしないでくれ
あの娘が乗るって言った列車は9時9分の次のやつなんだ

彼女には行かないでくれって頼んだ 膝付いて頼んだんだ
僕のことからかって 好きな素振りして遊んでるだけなのかい
横を空けて もちょっと空けて って言ったのさ
ベイビー 頼むからそんな氷みたいに冷たくしないでくれ
あの娘が乗るって言った列車は9時9分の次のやつなんだ

かばんを引っ掴んで駅へと走る
駅員は言う「そんな列車ないですね。違う駅じゃないですか?」
かばん引っ掴んで慌てて家へと戻る
そこでわかったよ 彼女が言った数字の意味を取り違えてたってね

何てこったい あの娘は9時9分の次のやつで出てくって言ったんだ
僕は言ったさ 自分もこうして同じ列車に乗ったから席空けてって
横を空けて もちょっと空けて って言ったのさ
ベイビー 頼むからそんな氷みたいに冷たくしないでくれ
あの娘が乗るって言った列車は9時9分の次のやつなんだ

かばんを引っ掴んで駅へと走る
駅員は言う「そんな列車ないですね。違う駅じゃないですか?」
かばん引っ掴んで慌てて家へと戻る
そこでわかったよ 彼女が言った数字の意味を取り違えてたってね

何てこったい あの娘は9時9分の次のやつで出てくって言ったんだ
僕は言ったさ 自分もこうして同じ列車に乗ったから席空けてって
横を空けて もちょっと空けて って言ったのさ
ベイビー 頼むからそんな氷みたいに冷たくしないでくれ
あの娘は言ったじゃないか 9時9分の
あの娘は言ったじゃないか 9時9分の
あの娘は言ったじゃないか 9時9分の次の列車に乗るってさ

ああ ダニー・ボーイ なつかしいサバンナが呼んでるよ


     *  *  *

かくて "One After 909" とは「909 の次の数字」、
つまり「910」のことで、歌の中では「9時10分発の列車」を
意味するわけだけれども、これは同時に「10月9日」、
つまりジョンの誕生日を表す数字でもあるのだ。
そう、"One After 909" は作曲者ジョン自身の誕生日が隠された
なぞなぞソングだったのです!w

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