2022年6月26日日曜日

【SL19B】 オーバーウルフとフィリップのインタビューに思うこと〜セカンドライフと昨今のメタバースとの違いについて(1)

 さて、自分のライブが終わってふぅ、と一息ついているヒロシです。
先週の水曜日は日本時間の朝6時から
 SL19B のイベント「Meet the Lindens」で
現在の経営者のオーバーウルフ・リンデンとフィリップ・リンデンの
お二人を招いてのインタビューが行われましたが、
この日僕はこのインタビューを見てから出社しました。

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お二人の話を聞いていてなるほど、と納得する部分が多々有り、
きっとそれがセカンドライフが19年も続いていて
更に自分のような人間が続けていられる理由なんだろうな、と
そんな感想を持ったわけなんですが、話がいろいろと膨らみそうで
今日まで書くのを遅らせてきたわけなんです。
今回で終わるかどうかもわかりませんが、
お二人が話した内容をお伝えするというよりは、
そのお二人の話に僕が感じたことを綴っていきたいと思っています。
ですので、お二人がどんな発言を実際にしていたかは、
YouTube でご確認頂ければと思います。

・Meet the Lindens 2022 - Oberwolf and Philip Linden
 

勿論英語ですが、字幕も出るようになっていますので
わかりやすいかと思っています。
(ところどころ間違ってますが、意味を理解するのに
 それほど支障はないかなと思ってます。^^;)

さて、まず、昨年から経営に当たっているオーバーウルフ、
本名ブラッド・オーバーウェイジャーさん、
リンデンを買収した時、この人何者?
SL の技術だけ取ったら SL を潰したりしないよね?
とか、あまり情報がないので不安に思っていたヒロシでしたから、
今回彼の話を直接聞けてとてもよかった、安心しました。
彼、実はフィリップとは長年の付き合いなんですね。
フィリップと一緒にバーニングマンに行ったりしてるらしく、
要はフィリップからセカンドライフのことをいろいろと聞いて
本当に SL の可能性を感じて買収に踏み切ったようなんですね。
だから、昨今のメタバース狂騒の中にあって
セカンドライフは違うから、とはっきりとしたスタンスを持って
経営されているという点に共感を覚えました。

少し前に、この日記で昨年亡くなったエブ社長の後には
CEO はいないのか? という話を書きましたが、
今回、オーバーウルフはリンデンには CEO を置かない、
とはっきり明言されていましたね。
意思決定は自分と4人の主要メンバーとが話し合って決める、
とのことでその4人とは
製品担当副社長の Grumpity Linden (Anya Kanevsky)、
開発担当副社長の Mojo Linden (Andrew Kertesz)、
マーケティング・リーダーの Brett Linden、
製品運用担当副社長の Patch Linden (Eric Nix) の皆さん、
これに時に応じて CFO の Aston Waldman さんや
Chief of Staff の Cammy Bergren といった
現実世界にいる経営陣を交えて意思決定するのだそうです。
そこには SL のコミュニティを大切にしたいという気持ちが
働いているのだろうなというように感じました。

次に、最近盛り上がって来ているメタバースについてですが、
SL はそもそも発想が違うんだよ、とフィリップが言っているのが
全くその通りだ、と感じました。
2007年に SL がブームになった時に、
たくさんのメタバースが現れ、
GAFAM の一角であるグーグルですらメタバースを作りましたが、
そのグーグルを含めて殆どのメタバースが消えてなくなりました。
それなのに SL が19年も続けられているのは何故なのか?
フィリップは、僕らは誰もが創りたいモノや世界を創れる
そういう場所として SL を作ったのだ、と言います。
自分たちはそういうプラットフォームを提供するだけであって、
ビジネスなのでその利用料はもらうけれど、
例えば 9.99 ドル支払ったら 15 ドルの価値をユーザーが得られる
そういうものとして、つまりユーザーが価値を生み出せる場として
SL を始めたのだけれど、最近のメタバースはどうも
利用してもらうことでユーザーからお金を搾取する
そういうしくみのように思えてならない、ということでした。

そうなんですよね。
日本ではセカンドライフは「失敗」したことになっていますが、
どちらかと言うと日本人の方が
セカンドライフで「失敗」したのではないでしょうか?
つまり、セカンドライフとは何でも自分のやりたいことが
自由にできる空間なので、やりたいことのない人や
自由ということに慣れていない人たちにとっては
何をしていいかわからない、つまらない場所だったのだと。
ゲームであれば最初から目的やそれを達成するための手段が
決まっていますので、それに従って動けばいいのですが、
自由とか自律とかいうことがあまり定着しておらず
とにかく前例と周りに従って生きる人たちにとっては
きっと苦痛でしかなかったことでしょう。
反対に、今も SL を楽しんでいる人たちというのは
結局はクリエイター、デザイナーやミュージシャンを含めて
ゼロのところからものづくりをするのが好きな人たちなんです。
時に SL の失敗をあざ笑うような投稿をする人がいますが、
私からすると、自分の創造性のなさを思い知らされて
出て行かざるを得なかった負け犬の遠吠えにしか聞こえません。

加えて、ただなりたい自分になって友だちと交流する、
というだけなら、何もインワールドで動き回る必要はないわけで
案外生き残ったものが着せ替え系の SNS だったりするのは
当然の結果だったように思います。
正直、私自身、SL の友人たちとのやりとりは
Facebook や Twitter で済ませることが多くなりました。
一つにはインワールドで打ち合わせしたりするのは
相手と自分が両方インしていないといけないので
それなりに自分の時間が使われてしまうからですが、
しかし、イベントをやったり、いろいろなことを友だちと試すのは
やはりインワールドでないとできないことですので、
自然とその辺りの使い分けをするようになっているように感じます。
例えば、何かの実験をするのでも、SNS で日時を決めておいてから
一緒にインワールドに入って実験する、そんな感じですね。

だから、今出てきているメタバースたちは
一体何をやろうとしているのか不思議でしょうがないのです。
仮想空間が有効なのは、ライブなどのイベントや、ゲーム、
そして会議や研修だったりですが、
例えばただ会議するだけであれば既に Zoom や Teams など
オンライン会議の環境が整ってきていますし、
まさか、インワールドで仕事するなんてことは考えられないでしょう。
実際、メタバース内で仕事をするという実験が行われていて
結果は殆どの人が幸福感が減少し、ストレスや不安が溜まった、
ということになったそうですが、さもありなん、です。
これは、幸福感を増す方向で作られた SL とは真逆の方向です。

あと、ブルームバーグの記者がメタのホライズンワールドに登録して
生活してみた経験をレポートしていましたが、
メタバースでも自分が女性であることや自分の人種によって
不利益を感じた、ということを言っていました。
実名登録主義の Facebook がホライズンワールドの登録に
どういう制約を設けているのかはわかりませんが、
SL は現実の名前や性別や人種と全く関係なく
自分をプロデュースできるわけですから、
こうした問題が起こるのも、そもそもの発想、哲学が違うからだ、
と感じざるを得ないですね。

今回フィリップの発言を聞いていて、あぁ、やっぱりこの人は
自分が抱いている理想的な社会を実現しようとして
セカンドライフを作ったのだな、と改めて感じました。
先に書いた、誰でも何でも自由にものづくりができる環境、
それも一部の人に利益が集中するようでなく、
平等に機会が与えられるような環境というものを目指して
SL の技術的な特性や課金などのルールも決められている、
要は理念やサービスが先にあってビジネスが考えられていて、
ビジネスが先にあるわけではないという点が真逆だと思うのです。

ああ、やっぱり長くなった。
まだ書きたいこと半分も書けていないけれど、
今日のところはここまでにしておきます。
それでは、また!

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