2022年7月3日日曜日

メタバースや NFT で何をしようとしているのだろう?

先週は、SL19B での新旧経営陣のインタビューを見て
感じたことを2回にわたって書かせて戴きましたが、
それを踏まえながら、もっと一般的に、
昨今話題になっているメタバースや NFT について
感じていることを綴ってみたいと思っています。

結論から言ってしまうと、Facebook が社名まで変えて
メタバースに注力すると発表してから
殆ど日本では忘れ去られていたと思われるメタバースが
急に盛り上がって来ていますが、そもそもメタバースというのは
プラットフォームに過ぎないので、運営会社はその中で
何を顧客となる個人や企業にしてほしいのか、という
グランドデザインがないとセカンドライフの真似をして
タケノコのようにたくさん生み出されては消えていった
15年前の経験を繰り返すだけになってしまうと考えています。
先日のセカンドライフ経営陣のインタビューでは、
ユーザーにお金を儲けてもらうのが自分たちの願いで
従って、ユーザーへの課金は最低限にする方針であることを
明言していましたが、どうもメタの Horizon World は
クリエイターの作ったものに対して47% の手数料をかけるようで、
明らかにユーザーからお金を搾取することを考えているようです。
しかし、そんな空間に個人や企業が参入したいと思うでしょうか?

この日記を読んでいる方々の殆どはセカンドライフの住人だと
思っていますが、そうでない方のために少し触れておくと、
メタバースで何かを行うということははっきり言って
メンドクサイのです。w
例えば、通信環境次第では、歩くだけでものすごく時間がかかったり、
或いは、自分が意図しないような動きをアバターがすることも
あるわけなんです。
なので、例えば Amazon が完全にメタバース化されて、
何かを買うのにメタバース内のモールの商品棚に歩いて行って
それを手に取ってカゴに入れるようなことをしないといけなくなると
きっと僕は Amazon を使うのをやめてしまうでしょう。
そんなメタバース内のモールを歩き回るよりは
ホームページ上のリストをザッピングする方が遥かに多くの商品を
短時間で確認して選び、購入することが可能だからです。
それは社内のオンラインミーティングでも同じです。
Zoom や Teams、Webex といった環境が整っている現在、
わざわざメタバース上の会社に出勤する必要はありません。

メタバースが絶対的に有利なのはこうした EC サイトではなくて、
「没入感」が必須の体験だということです。
となれば、それはライブやスポーツなどのイベント、
或いはゲームといったものに限られています。
或いは普通は行けない場所への旅行、というのもあるでしょう。
(例えば、今はなくなった江戸城の中を巡るツアーとか、
 南極やピラミッドの普通は公開されていない場所へのツアーとか)
しかし、それ以外に企業ができることというのは、
せいぜい宣伝だけだと思います。
ちょうど15年前にセカンドライフの中に
日産の車の自動販売機があったように。
当時企業が自社ブランドの車をセカンドライフ内で配るなんて
珍しいことでしたから、みんなあの自動販売機に行って
日産の車をもらってきて、それに乗って遊んでましたよね。w
でも、セカンドライフ内でのドライブは勿論面白いけど、
それは、実際に車を運転する感覚とは違うんじゃないかな。

今車と旅行の話が出たので話を広げると
こうしたものは、敢えてメタバースでなくて VR でいいと
僕自身は考えているんです。
VR とメタバースと混同されてきているところがあるように
思うのですが、
VR の世界では既に海外ツアー、運転のシミュレーション、
不動産の内覧といったものがとっくの昔に実現しています。
更に言うと、先ほどの Amazon で商品を選ぶという話ですが、
これもウェブ上で商品を選びづらいのは服や靴などの
衣類だったりしますが、VR や AR の技術を使えば
自分が着たり履いたりした時の感じがわかるようになります。
メタバースだと、そもそも自分はアバターですし、
そこで着たのと同じものが現実の世界で届く保証は
ないじゃないですか。www
多くの企業にとっては、求められているのはメタバースではなく、
VR/AR の技術を自社の商品販売に取り入れていくことだと
僕自身は考えています。

更に、セカンドライフの日産の車の話を広げると、
NFT、これはメタバースとは親和性がありますね。
もともと、世の中に1つしかない故の価値、ということになると、
これはもう美術品の世界ですね。
ダ・ヴィンチの「モナリザ」がその代表かもしれませんが、
1枚しかない故の価値というのがあるわけです。
一方、音楽は20世紀の「レコード」の発明で
大量生産大量消費の対象となってしまい、現在では
デヴィッド・ボウイが予言したように水のように
殆どただで消費されるものになってしまいましたが、
1983年に我が敬愛するジャン・ミシェル・ジャールが
1枚だけのレコードを製作してオークションにかけたように
今後は NFT を使って持っている人しか聴けない音楽
というのが出てきてもおかしくないでしょう。
何れにしても、世界に1つだけの価値、ということになれば、
アートの世界で今後発展していくものと考えています。

そして、NFT のもう一つの使われ方が、
メタバース内のアイテムとしてのものです。
例えば先ほどのセカンドライフ内の日産センティアは
ただで配られていましたが、例えばフェアレディZの
特別仕様車を1台限定で販売して、
メタバース内で乗り回すことができる、といった展開が
可能だと考えています。
企業がメタバースに参入するとすれば
このような形の方が自然かもしれません。

新しい技術というのは早く参入したもの勝ち、
というのがあるのは事実ですが、
その一方で、その技術を使って自分、自社で何ができるのかは
よくよく考えた方がよいと思っています。
メタバースの1つに Earth2 というのがあって、
現実の地球上にあるのと同じ土地や都市が広がっていて
その土地を買うというのが盛り上がっていますが、
何れその土地で都市づくりができるようになるものの
現時点ではまだ不動産の購入しかできないようです。
こうした土地を買った人は何をするのだろう? と思うのです。
例えば、渋谷の交差点の土地を買った人は、
そこに現実の109やQ Front を再現するのでしょうか?
それともそうしたものを無視して、例えば大聖堂を築いたり、
或いはビーチにしたりするのでしょうか?
前者であればプラモデルの延長のような楽しみしかありませんし、
後者であれば敢えて渋谷のその土地を買う意味がありません。

メタバースで何ができるか、それを考えるには、
一度セカンドライフに遊びに来ることをオススメしたいと思います。
現実の世界を忠実に再現したものもあれば、
現実の世界ではあり得ない空間もあり、
また、ほっと一息つけるような和める場所もありで
多くの可能性に満ちた世界になっていますよ。
セカンドライフは失敗した、終わった、と言っているのは
結局のところメタバースの可能性を感じとれなかった人たちです。
メタバースが盛り上がってきている今、
もう一度セカンドライフを振り返ってみてはいかがでしょうか。

※「没入感」に関連して、ライブとスポーツに関しては
いろいろと感じることがあるので、
また別の機会に詳しく触れることに致しますね!

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