2022年7月9日土曜日

【RL】 とっても残念な SF 映画「紀元前1万年」

ちょっとした時間の隙間で「紀元前1万年」という映画を観た。
このタイトルは僕には昔懐かしいレイ・ハリーハウゼンの
「恐竜100万年」という映画を思い出させた。
ポスターの絵もマンモスが描かれているので
あれのリメイクをローランド・エメリッヒがやったのかなぁ、
くらいにしか思っていなかったのだ。
「恐竜100万年」という映画は1940年のモノクロ映画
「紀元前百万年」のリメイクなのだが、
どちらも英語のタイトルは "One Million Years B.C." で同じ、
ローランド・エメリッヒのは "10,000 BC" でよく似ているが
ああ、桁が違うよね、というのはあとで気づくのだった。

なので原始人映画のつもりで観始めたら、
いきなり主人公達が英語でベラベラ喋り出すのにまず違和感。
ハリーハウゼンのは、子供の時にテレビの吹き替えで観たので
もう殆ど記憶にはないのだが、あまり台詞らしい台詞がなかったかと。
その英語で話す人々の村を馬に乗った人々が襲いに来るのだが、
どう見ても中世イギリスのアーサー王とかロビンフッドとか
そういう時代に見えて仕方がなく、ダメだこりゃ、
と思っていたところが。。。

ところが、である。
馬に乗った人々に仲間を連れ去られた様々な部族の戦士を糾合して
馬に乗った人々の本拠地に乗り込もうとすると
そこは連れ去られた多くの奴隷を使って
巨大ピラミッドの建設を行う巨大な都市国家であった、という展開。
支配者階級は「神」と呼ばれる常に御簾の陰にいる存在と
不思議な言葉を話し、その存在に仕えるのだった。
そして、その神は「しるし」を持った人間が現れると
滅びるとの予言があったのだが、その「しるし」とは、
馬に乗った人々に連れ去られた主人公の許嫁の手の甲に刻まれた
オリオン座の形をした痣だったのだ!

と、ここまで来て、「100万年」でなく「1万年」の理由がわかった。
なるほど、これは原始人映画ではなくて、
古代宇宙飛行士説に基づいて紀元前10500年頃に
大洪水で滅んでしまったと言われる超古代文明を描く
SF 作品だったのだ。
エジプトのピラミッドを始め、世界中の古代遺跡が
10500年前の星の位置と関係していることは有名な話だし、
エジプトやテオティワカンのピラミッドの配置が
オリオン座の三つ星の形と同じであることも有名だが、
古代宇宙飛行士説では、宇宙から来た人々が
人間に技術を教え、或いは人間そのものを創り、
彼らの目的を達成するためにこれらの遺跡を造ったという。
「紀元前1万年」はその古代宇宙飛行士説に基づいた世界観を
表現しようとした作品だったのだ!

そうすると気になるのは、「神」と呼ばれる存在の姿だ。
私は頭の長い姿を想像したが——古代エジプトの神々のように——、
どちらかと言うとグレイに似た姿であるようだった。
しかし、グレイは目が真っ黒であるが、寧ろ透き通った青だ。
このあたり、ちょっとイマイチだなぁ、と思うヒロシ。w

主人公の許嫁は、元々襲撃された村の生き残りで青い瞳をしていた。
この青い瞳の少女が世界を救うという予言があったのだが、
この許嫁は、主人公が「神」の許から救い出した時に、
弓矢に当たって一命を落としてしまう。
が、奇跡的にも再び青い瞳に輝きが戻り息を吹き返すのだ。
ナレーションは「こうした青い瞳の子供の新しい物語が始まった」
といった内容を伝える。

とすると、これはスターチャイルドの要素も取り込んでいるのか?
ホピ族には青い星が地球に衝突し、そこから新しい時代が始まる
という伝説があるらしい。
或いは、星から来た子供が部族の長となり人間を救うという
そんな伝説もあるらしい。
こうした伝説もこの映画の下敷きになっているのだろう。
が、そうだとすると「神」と彼女はどうしてどちらも青い目なのか、
どうして彼女の存在が「神」の滅亡につながるのか、
「神」も彼女と同じオリオン座から来たのではないのか、
こういった疑問を僕なんかは抱いてしまうわけ。

結論を言うと、日本ではあまり真面目に捉えられていない
古代宇宙飛行士説を描こうとしたこと自体に
とても共感を覚える一方で、いろいろなことが中途半端で
とても残念だなぁ、と感じるわけです。
そもそもタイトルとポスターが誤解を生むし、
だから、「古代の歴史に忠実でない」という、
実は的外れな批評を受けて評価が下がる結果に陥っている。
もっと古代宇宙飛行士説をベースにした SF 色を前面に打ち出せば、
また違った評価になっったのではないかと。

僕なら——と、映画づくりなんかできないことはおいて書くと——、
ポスターにはマンモスではなくてピラミッドの絵を入れるでしょうね。
そして、台詞は極力廃しつつ、英語ではなくシュメール語がいいね。
(そう言えば、各部族の戦士たちが集まった時の掛け声が
 「ヤハラ!」だったが、これもアラビア語で「万歳!」の
 意味なので、一般のアメリカ人にはわからないかもしれないが、
 アラビア語がわかる人にはすぐわかるのでイマイチだった。w
 アメリカにも今はアラビア語話す人は多いはず。)
あと、各地の村を襲撃する人々が乗る動物も
馬ではなくて駱駝でしょう、やっぱり、雰囲気が出るのは。
或いはもっとラディカルに、宙を浮く船のようなものの方が
宇宙人感があってよろしい。

それから、主人公の許嫁がピラミッドの神と対立するなら、
彼女はオリオン座でなく、シリウスかプレアデスから来た
スターチャイルドという存在の方がよろしい。
そしてスターチャイルドということであればかぐや姫を思い出す。
僕ならこれにエノク書とかノアの伝説を絡める。
即ち、地球に彼らのエネルギー源である物質を求めて
オリオン座から訪れた頭の長い宇宙人は人間を奴隷にして
基地となるピラミッド建設を進めるが、
これとは別に宇宙の平和を司るプレアデス由来の宇宙人
「見守る者」たちは人間の中にスターチャイルドを送り込み
この子供たちを通じて地球の情報を得ていた。
そして、オリオン星人の行おうとしていることが、
人間や地球だけでなく、宇宙の平和をも脅かすことを知った
「見守る者」たちは巨大な母船で地球に近づいてビームを発射、
これによって地球の気候が大きく変動して大洪水が起こり、
オリオン星人の文明は滅び、人間もスターチャイルドに導かれた
ごく一部の人たちだけが生き残ることになる。
こうして人類の新しい時代が始まったのだった——。
スターチャイルドは、人類を救ったあと、
上空に現れた母船に乗ってプレアデスに還って行ってもいいね。
かぐや姫のように。。。

いや、このくらいじゃないと SF としておもしろくないかな、と。
「紀元前1万年」では、高度な文明を持った「神」を
たくさんの人間が力を合わせることで倒してしまうけど、
これって結局「インディペンデンス・デイ」と同じ発想で
あまりにお目出た過ぎる。
これがこの監督の限界なのかもしれないですね。
この映画のあとマヤ暦を扱った「2012年」を製作していることから
この監督、古代宇宙飛行士説に関心ありそうではありますが。。。

誰か僕が上に書いたプロットで映画作ってくれないかなぁ。
かなり面白くなると思うんだけど。www

・紀元前1万年

No response to “【RL】 とっても残念な SF 映画「紀元前1万年」”

Leave a Reply