2022年8月31日水曜日

【RL】 案外悪くない戦争映画「ミッドウェイ」

そう、前に書いた「案外悪くない SF 映画「ムーンフォール」と
同じようなタイトルなのは、僕にとっては珍しい
ローランド・エメリッヒ監督作品レビュー3連発だからだ。

前にも書いた通り、有名な「インディペンデンス・デイ」代表される
この監督の作品を僕はあまり買っていない。
殊「インディペンデンス・デイ」に関して言うと
未知の知的生命体に対する勝利というのが
あまりに楽天的過ぎるからだ。
アメリカ人が団結すれば宇宙から来た知的生命体だって
やっつけることワケないぜ〜、みたいな。
この監督が作った「ゴジラ」もそうだった。
後にハリウッドで作られたゴジラに与えられたような
神性はなく、やっぱりやっつけることが出来る相手なのだ。

その僕の評価が変わったのは「紀元1万年」であり、
新作の「ムーンフォール」だ。
何だかより神秘的な世界を描こうとしているのではないか、
そう感じさせるものがこの2つの映画にはあった。

なので、アマゾン・プライムで「ミッドウェイ」の配信が始まった時
僕は戸惑ったのだ。
ミッドウェイ海戦をテーマとした映画なら
1976年に公開された映画が一応の定番となっている。
定番とはなっているものの、この映画の戦闘シーンの多くが
当時のニュース映画や、公開された映画からの流用だったことや
(これより前に話題になった真珠湾攻撃を描いた日米合作映画
「トラ! トラ! トラ!」からのカットすらあった。w)、
日本人が皆英語を喋る違和感などいろいろと問題があったよう。
「インディペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒ監督だと
きっと日本を怪物のように(ゴジラがそうであったように)
描くに違いないので、今更見たくないよね、と感じたのが
正直なところなのです。

が、ちょうど「紀元1万年」や「ムーンフォール」を観て
この監督に対する関心が湧いて来た時期だったので、
「観たい!」という欲求の方が勝ったわけなのです。
で、観てみたところ、案外面白い。
正直、この監督の映画の中で一番まともかも、と感じたくらいです。

何が面白かったかというと、大体アメリカ目線で作られる映画だと
日本側の考証がしっかりしてなくて、これまでの映画だと、
例えば御前会議や軍議が神社のようなところで立って行われたり、
日本人が頭の悪いサルのように滑稽に描かれていたりして
観てるだけでムカムカと腹が立ってくるものが多いのです。
それが変わって来たのはクリント・イーストウッドの
「硫黄島2部作」あたりかもしれないですね。
で、今回のミッドウェイが面白かったのは、
米軍が日本軍をとても怖れていたという視点。

第二次世界大戦はあくまでもヨーロッパの戦争で、
アメリカは静観を決めていた。
つまり、戦争には関わらないというスタンスだった。
それが日本軍による真珠湾攻撃で一変した。
アメリカも戦争を戦わなければならなくなったのだ。
真珠湾攻撃を受けたアメリカは、上級将校以下、
日本には最高のパイロットが揃っている、
日本の軍艦も空母も世界一、これにどうやって打ち勝つのか、
と、アメリカにとってはミッション・インポッシブルだったという点。
それから、空母や戦艦に飛行機で体当たりする特攻隊は
日本軍にしかできなかった決死の行為として描かれることが多いのに、
ここでは空母に突撃するのはアメリカ海軍の航空隊なのだ。
そしてその決死の行為によってこそ、日本の空母の能力を
削ぐことで、その後の戦況を有利にした、という描き方だ。

また、戦艦大和の撃沈に関して、子供の頃に教わったのは、
時代は戦艦から航空機に移っていたのを日本の軍部が
判断できなかったからだ、というようなことでしたが、
この映画で面白いのは、米軍は勿論日本軍も、
敵の航空母艦を撃沈することこそ勝敗の分かれ目と見て、
それぞれ敵の残った艦船の撃沈を試みた、という点です。

アメリカ側は日本の暗号を解読して日本軍の動きを読んでいますが、
日本側も相手の動きを元に、これはワナだな、と感じ取ったり
互いの神経戦というかインテリジェンス戦というか、
どちらか一方が優位というのではない、描き方が素晴らしい。
恐らく、戦場に出ていた指揮官たちの
それが現実ではなかったかと納得させられるものがありました。

まぁ、そんな中では國村隼さん演じる南雲中将は判断甘過ぎで
滑稽にすら感じさせられる一方、
浅野忠信さん演じる山口多聞少将が常に判断が冷静で
かっこよすぎるんですけどね。w

細かい点を突っ込めば、いろいろと史実と違うところは
あるんでしょうが、ここまで米軍と日本軍を同じレベルで描いた
映画はなかったかもしれないと思うくらい、
そして、米軍の主人公たちにも、日本軍の主人公たちにも
頑張れ〜、と応援したくなった戦争映画はないです。
疑心暗鬼で観始めたものですが、1976年のものより
ずっと出来がいいんじゃないでしょうか。
そう、ローランド・エメリッヒという監督が撮ってきた
数々の SF 作品よりずっと出来のよい、この監督の作品としては
一番いい作品なんじゃなんじゃないか、
そんなことを感じたヒロシなのでした。

オススメです!^^

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