2022年9月25日日曜日

【RL】 久しぶりに見直した張芸謀の「HERO」と「LOVERS」

中国の映画監督張芸謀(チャン・イーモウ)は
嘗て僕の好きな監督の一人だった。
その名前を知ったのはちょうど僕が大学で中国語を勉強していた頃、
陳凱歌(チェン・カイコー)監督の「黄色い大地」を手始めに
いろいろと中国映画を観ている中で、
やっぱり1987年の「紅いコーリャン」の映像美に魅せられ、
続く「菊豆(チュイトウ)」もテレビで観て、
折しも劇場公開された「紅夢」は映画館に足を運びましたよ。
とにかく色彩の使い方が綺麗なのと
これら3作品で主演を務める女優鞏俐(コン・リー)の美しさも
また魅力の一つだったですね〜。
その映像美に、とってもアートなものを、新しい中国を感じたんです。
そしてこの監督は、コン・リーという女優だけでなく、
1999年の「初恋の来た道」で章子怡(チャン・ツィイー)という
これまた美人の女優さんを見出すんですよね。

序でに触れると、チェン・カイコー監督の方は、やはり
コン・リーを起用した「さらば、わが愛/覇王別姫」を1993年に公開、
その後は夢枕獏さん原作による「始皇帝暗殺」を1998年に、
ドラマ化作品が日本でも話題になった「北京バイオリン」を2002年に、
そして最近ではやはり夢枕獏さん原作の
「空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎」を 2017年に監督してますね。
何れも、日本人にも楽しめる素晴らしい作品と思っています。

さて、話を戻すとそんな個人的にアートを感じていた
チャン・イーモウ監督だったのですが、
2002年公開の「HERO」と2004年公開の「LOVERS」には
公開当初とってもガッカリしたんですね。
「紅いコーリャン」では、もう、青い空や紅い空を背景に
コーリャンの畑が映っている、そんなシーンだけで
アートを感じたものでしたが、
「HERO」では、香港映画特有のワイヤーアクションを使って
空中を剣を持った武人たちが飛び回るわけですよ、
いかにもあり得ないような動きで。
これを観て僕は、あ〜、チャン・イーモウも終わったな、
とか思っていたわけですが、それを決定的にしたのが、
つい最近、2017年に映画館に観に行った「グレート・ウォール」です。
もう、これは完全にハリウッド映画でしたね〜。
確か、別の映画を観に行った時にポスターを見かけて、
ほう、チャン・イーモウが万里の長城の映画か。。。
と気になって観に行ったのでしたが。。。

ところが、最近、何か面白いアジア映画はないかと
Amazon, Hulu, Gyao などを見ていたら、
韓国映画を含めて結構伝奇的なものがいろいろ作られてる。
そんなんだったら、久しぶりに「HERO」とか「LOVERS」とか
観て見たいものだ、と思っていたら、最近 Amazon Prime で
配信が始まりましたので、思わず2作続けて観ましたよ。w

流石に、20年近くを経て観てみると、やはり見方が変わってましたね。
「HERO」の方は、例のわざとらしいワイヤーアクションや
1本の弓矢が弦を離れて宙を飛び、建物の中に入って
何かに刺さるまでを執拗に追うカメラワークとか、
そういうのは今となっては笑えるところもありながら、
一方でそういうわざとらしさもこの監督は追求したのではないか、
と思いました。
というのは、同時に、この監督の特徴である色彩美、映像美は
一層磨きがかかっているように今は思えるからですし、
ちょっとした1カット1カットに、嘗ての日本の名画に通ずる
東洋的な美、東洋的な価値観の素晴らしさが織り込まれているのです。
秦の始皇帝暗殺が背景なのはアニメ「キングダム」が放送中の今、
併せて観るのに興味深いものもあります。

続編とも言うべき「LOVERS」の方は、
これは個人的にはタイトルが気に入らなかったのですが
——中国映画らしくないので——、
中国語の原題は「十面埋伏」というのです。
今観て、あっ! と思いました。
「十面埋伏」は、私は何樹鳳(ホー・シューフォン)さんが演奏する
琵琶の名曲で知っているのですが、
これは項羽と劉邦の戦いを音楽で表現したもので、
項羽の軍を四方八方から攻めて打ち負かした時のことです。
きっと、主人公の二人が、どちらにとっても敵や味方から
襲われ続けながら旅を続ける状況を項羽のそれに擬えたのでしょう。

こちらの映画も、映像美や中国文化のよい部分が描かれているものの
しかし、正直この映画はチャン・ツィイーの美しい魅力が全て、
と言っていい、ズルイ作品だな、と思いました。w
チャン・ツィイーは、前の「HERO」にも出ているのですが、
比較的地味な脇役に徹していましたが、
ここでは、その魅力全開という感じです。
やぁ、こんな人と一緒に旅していたら、金城武でなくても
きっと骨抜きにされてしまいますね。w

というわけで、20年前に観た時は、つまらない、と思った
これらの2作品、今見直すと案外おもしろかったです。
この20年間の時代の変化で作品の位置付けが変わったのか、
或いは単に、僕が年齢を経て趣味や感じ方が変わったのか、
日本を含めアジアでたくさん作られる B 級映画を観るよりは、
今こそオススメできる作品たちだと思った次第です。^^

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