2022年12月11日日曜日

セカンドライフの経済価値と昨今のメタバースのビジネスモデルについて

先日の冬のミニセカでの In Yan(三淵)先生によるトークは
いろいろと示唆に富んだものでした。
先生がお話しされていた中でセカンドライフの経済に関する事は
外に向かって大きく発信すべきことだと日頃から感じていますので
ここで触れさせて戴きます。

まず、セカンドライフには GDP が存在するということです。
GDP、国民総生産とは、内閣府によれば即ち、

「居住者たる生産者による国内生産活動の結果、
 生み出された付加価値の総額」

のことです。
つまり、そこに住んでいる人が稼ぎ出したお金の総額ということです。
つまり、セカンドライフではその中に住んでいる人が
何かを売ってお金を稼ぐことができるということを意味しています。
こうして住民がモノを売って稼いだお金が、
2021年では米ドルベースで 6億5千万ドル、
今年初めのレートだと748億円、最近のレートだと900億円という
規模のお金が動いているということです。
これは世界の国や地域と比較すると大体210位くらい、
トンガやアメリカン・サモアといった
太平洋の島国に匹敵する規模の GDP なのです。

ここで考えたいのは、昨今盛り上がって来ているメタバースは、
住民がお金を稼げるシステムになっているか、ということです。
寧ろ、住民からお金を取るために、
或いは、そこに進出する企業もまた住民(法人)ですから、
そうした企業からお金をとるためのシステムになっていないか、
ということです。
メタバースというものが現実の社会の延長線上にあると考えると
そのような国や街が魅力的でないことは考える間でもないことです。

現実の社会との比較で考えると、
おもしろいことに、セカンドライフを運営していリンデン・ラボは、
こうした住民内の経済的取引に関して、
つまり所得税や売上税(消費税)のようなものを課していません。
リンデン・ラボが課しているのは住民税のような
アカウント維持費で、これも有料のプレミアム・アカウントのみで、
経済活動がやや制限される無料のベーシックアカウントでは
この住民税ですら免除されています。
(因みに、プレミアムアカウントの料金は、
 月額11.99ドル、年額99ドルですので
 モノを売って稼げる人にとっては安いものです。
 そう言えば、土地を持っていると固定資産税のようなものが
 別途毎月かかりますね。これは所有している広さに応じて
 無料から段階的に上がっていきます。)

セカンドライフが日本で失敗した! と言われて尚10年以上、
リンデンがこの世に送り出してから既に19年、
新年には20周年を迎えようという程長く続いているのは、
こうした住民にとって魅力的な環境となっているからです。
繰り返しますが、住民にとってそこを過ごすことが
楽しい時間とならなければメタバースというものは続きません。
というのは、メタバースの中で動き回ることは実は面倒だからです。w
何かモノを買ったり、手続したりする程度でしたら、
現在の Web サイトの方が余程便利です。
メタバースを展開しようとする企業のみなさんには、
ああ、またあそこへ戻りたい、いや、あそこに住みたい、
そう思えるような空間の創出を是非考えて頂きたいものと願います。

最後に、セカンドライフ経済に関する数字を少し上げておきます。
これは昨年央から今年の初めにかけて報告された数字になります。
2013年と2018年にはそれぞれ10周年、15周年を記念して
インフォグラフィックという形で経済報告がありましたので、
20周年の来年にはそれが出ることを期待しているヒロシです。^^

(以下、かっこ内はそれぞれ2018年、2013年の数字)

・GDP:6億5000万ドル
・面積:1,791平方キロ(香川県より少し小さいくらい)
・年間の取引量:3億4500万件
・年間の現金化金額:8,500万ドル(6,800万ドル、—)
・インワールドの住民資産:20億件
・マーケットプレイスの品目数:800万件(500万件、210万件)
・月間の新規登録者数:35万人(35万人、40万人)
・一日にログインするユーザー数:200ヶ国より20万人

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