2023年4月12日水曜日

【RL】 坂本龍一さんのこと〜つづき

前の日記で坂本龍一さんの映画音楽について勝手なことを書いたが、
書くつもりでいながら長くなったので書かなかったことがあります。
今回は補遺としてその書かなかったことについて触れます。

映画音楽の作曲者として坂本さんが注目を浴びたのが
例の「戦場のメリークリスマス(1983)」ですし、
アカデミー賞を受賞したのが次の「ラストエンペラー(1987)」、
そして1991年には「シェルタリング・スカイ」の音楽を担当します。
この「シェルタリング・スカイ」もまたクラシック的な
短い動機が繰り返される形で曲が進行します。
雑誌の「キーボードマガジン」にピアノ譜が載ったので
当時僕も練習しました。w

230412a

実は、僕の中ではこの3つはセットになっているのです。
リアルタイム的に自分でピアノに取り組んだからでしょうか。
しかもよく見ると、この「シェルタリング・スカイ」の動機、
「戦場のメリークリスマス」の1小節目や
「ラストエンペラー」の第一の動機の後半部分に似ています。
比較のためにこれらの譜例をもう一度掲げておきますね。

230408a

230408c

僕の記憶に誤りがなければ、「キーボードマガジン」の楽譜には
坂本さんご自身の解説が付いていて、
エンディング直前でマイナーからメジャーに転ずることについて
触れられていたように思います。
「シェルタリング・スカイ」は全体はト短調ですが、
確かにこの部分、短調による同じ動機の繰り返しが
長調に切り替わってあたかも光が差して来るようで素晴らしいのです。

230412b

僕は短調で始まった曲が長調で終わるのが好きなのです。
今書いた通り、どちらかというと哀愁を感じさせるメロディーが
最後には光が差して来て希望を持って終わるようで。
実はバッハの時代はそれが当たり前だったのだそうなのです。
で、この曲も光が一杯差して来て力強く終わるのかと思いきや、
再び短調に転じで静かに消え入るように終わるのは
そこが坂本さんらしいひねりなのでしょうか。
ただ、この静かなエンディングは音数が少ないので
最早短調とも長調ともつかない曖昧な雰囲気になっているのです。
全体としては主人公の揺れ動く心が音楽で表現されている
ということなのでしょうか。

さて、話を「ラストエンペラー」に戻します。
前回僕はこのテーマ曲を一つの管弦楽曲に見立てて
今から○十年前に行った自分なりの解釈をお伝えしたわけですが、
この稿を書くに当たっていろいろ確認する必要があると思い、
この映画のサントラ盤 CD を買い直しました。
前は「戦場のメリークリスマス」と共に
LP レコードで持っていたはずですが、売ってしまったか
実家に送ったか、今ぱっと参照できないので買ったのです。

そして、ふと気になったことがあったので確認しました。
映画のテーマ曲の場合、オーケストレーションは作曲者とは
別の人が担当していたり、
オーケストラの指揮も作曲者自身でなかったりします。
私が驚いたのはミュージカルの「ウェストサイド物語」で、
作曲が当時ニューヨークフィルの指揮者バーンスタインであることは
有名な話だと思うのですが、サントラ盤のクレジットを見ると
何とオケの指揮はバーンスタインではないのですね。

そんなこともあって、坂本さんが作曲した一連の曲は
誰が演奏しているんだろう? と思ったのですね。
で、今回クレジットを見返してみると、共同作曲者の
デヴィッド・バーンと蘇聡のところには "Perfomed by" として
演奏者の記載があるのですが、坂本さんのところにはない!
え? と思ってよく見ると、最後に Fairlight Programming として
ヒロ・スガワラさんのお名前と共に、
ハンス・ツィマーさんがクレジットされているではないですか!
なるほど、生のオケではなくて Fairlight CMI の音だったのですね!

230412c

で、ハンス・ツィマーと言えば今や押しも押されぬ映画音楽の大家、
ハリウッドの大作でこの人が音楽を担当していないものを探すのが
難しいくらいの存在感のある人ですね。
この方が注目を浴びたのが 1988 年の「レインマン」の音楽だそうで、
その直前、彼は坂本さんの音楽の手伝いをしていたんですね!
そしてはい、このハンス・ツィマーのオーケストレーションも
僕はいろいろと参考にさせて戴いています。
僕を魅了した映画音楽を生み出したこの二人が
こうして繋がっているというのはとても感慨深いものがありました。

いやぁ、映画音楽ってホントにいいもんですね!

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