2020年12月31日木曜日

【RL】 アンドレ・ジョリヴェの「オンドマルトノ協奏曲」

 いきなり謎の言葉が並んだタイトルかもしれない。
アンドレ・ジョリヴェというのはフランスの20作曲家で、
オリヴィエ・メシアンと「若きフランス」というグループを結成した、
音楽はエドガー・ヴァレーズに師事した人、
と言えば何となくわかる人がいるかもしれない。
このジョリヴェの代表作と言えば「赤道コンチェルト」とも呼ばれる
「ピアノ協奏曲」ともう一つが「オンドマルトノ協奏曲」だ。
ピアノ協奏曲の方は以前からアントルモンのピアノと
ジョリヴェ自身が指揮するパリ音楽院管の演奏で持っているのだが、
オンドマルトノ協奏曲の方は名前ばかりで聴いたことがなかった、
と、最近中古で売りに出ているのを見つけて漸く手に入れ
聴くことができたのである。
この曲のことを知って何十年ぶりかという。w

201231a

これはジョリヴェのエラート録音集成とかいう4枚組の CD で、
ジョリヴェの管弦楽と室内楽の大抵の作品が入っているというもの。
お目当てのオンドマルトノ以外の演奏者は、
チェロのロストロポーヴィチ、フルートのランパル、
トランペットのモーリス・アンドレ、ハープのリリー・ラスキーヌ
と、何ともまぁ豪華な顔ぶれで、普通の人はこっちがメインかな。
肝腎のオンドマルトノは、ジャンヌ・ロリオで、
この人はメシアンの「トゥランガリーラ交響曲」で
お姉さんでメシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオと一緒に
この曲の演奏や録音を一緒に行ってきた人、
謂わばオンドマルトノの大家と言える人だ。

で、オンドマルトノって何? ということになるわけですが、
言ってみればテルミンの兄弟分でシンセサイザーの先駆け
という感じでしょうか。
キーボードがついているのですが、鍵盤を叩いても音は出ず、
左手の手元にある「トゥーシュ」というボタンを押し込む事で
押し込んだ深さに応じてボリュームが出ます。
つまり、鍵盤楽器でありながらピアノやオルガンなどと違って
バイオリンのような遅いアタックの演奏も可能というわけです。
更に鍵盤を押し込んで左右に震わせるとビブラートがかかるし、
何と言っても「リュバン」と呼ばれる指輪をはめて
鍵盤の手前にあるリボンを左右に動かすと
ピュ〜〜ッと音程が連続的に上下するという
鍵盤楽器らしからぬ自由度のある楽器なのです。

と、言葉で説明してもわかりづらいので、
次の「トゥランガリーラ交響曲」の第5楽章の演奏を見て下さい。
これはなかなか素晴らしい演奏で、
指揮者に向かって右手、茶色いキーボードを女性が演奏してますが、
このキーボードがオンドマルトノなのです。


女性奏者の方が、のけぞったりしながら、リュバンを
右に左に大きく動かすとピュ〜〜ッと上がったり下がったりするのが
よく捉えられていると思います。
あと、キーボードを弾いている時は細かく左手で
トゥーシュを動かしていますよね。

ピュ〜〜ッという音で思い出された方もいるかもですが、
今年の「セカフェス」で僕が演奏した「ファウンデーション」の曲、
あそこでテルミンみたいだと誰かがコメントしていて
ケルパさんが「刑事コロンボだ」とおっしゃっていたあの音、
あれがオンドマルトノの音を真似したものなのです。

テルミンやシンセサイザーはあまりクラシック系の音楽では
使われないようなのですが、一方でこのオンドマルトノを使った曲は
先のメシアンの「トゥランガリーラ交響曲」の他にも、
オネゲルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」などもあって
これも非常におもしろい曲でよく聴いたりしますが、
何れもオーケストラの中の1楽器として扱われているので、
キーボーディストの端くれとしてはやはり、
ソロを取ってる曲を聴いてみたいと思うわけですよ。
それがジョリヴェの「オンドマルトノ協奏曲」なわけですが、
如何せん、なかなか CD とかではなかったのですね。
で、中古で見つけて、おお! というわけです。
なるほどこの楽器の特徴をいろいろと活かしたおもしろい曲でした。

因みに、テルミンを使ったクラシック系の曲、調べてみましたが、
あることにはあるものの、何れもオンドマルトノで代用することが
多いようです。
テルミンはオーケストラの中で使うよりも
小さい編成の中で使う方が使い易いのかもしれません。
テルミンは楽器に触らないで演奏するので、
演奏しているというよりは何とも魔術的な感じがしますね。w
個人的にはレッド・ツェッペリンの「狂熱のライヴ」というビデオで
「Whole Lotta Love」の即興部分でジミー・ペイジが
テルミンを操っている姿が何ともアヤシくて印象深いです。w
オーケストラ曲でオンドマルトノが好まれるのは、
結局はその演奏法が弦楽器や管楽器に近いからかもしれません。

No response to “【RL】 アンドレ・ジョリヴェの「オンドマルトノ協奏曲」”

Leave a Reply