2023年9月4日月曜日

【RL】 フランスとドイツのマーチを聴く!

さて、8月末に行われた第6回セカフェスでは
わが横浜マーチングバンドはパレードと演奏会を行ったわけですが、
演奏会を行うに当たって指揮を担当する僕は、
今更ながらに吹奏楽の勉強をしているところであります。w
子供の頃から管弦楽大好き人間で、やっぱり弦がないと、という人です。
なので、過去の演奏会では弦入りの曲をやっていましたが、
winds さんが卒業した今、改めて弦の入らない、
所謂吹奏楽のアレンジなどを勉強しているわけです。

で、僕の好きなマーチの名盤というと、やはり弦も入ってる
バーンスタインがニューヨークフィルを振ってるマーチ集で、
これは全体にテンポが速い。
バーンスタインもオケも超ノリノリで演奏していて、
中でも特に早いのが「星条旗」で、
ここではピッコロがもう前のめりのすごい演奏、すごい名演です。
この弦入りの、前のめりの演奏に慣れた耳を正常に戻すのは、
やはり定番フィリップジョーンズアンサンブルのスーザ名曲集、
というわけなんです。

そう! マーチというとスーザなんですが、
フランスやドイツにも名曲ありますよね、ということで
中古 CD 屋さんで物色していたら「おお!」という2枚を見つけたので
今日はその話をします。

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まず最初は、フランスの名門、ギャルド・レピュブリケーヌによる
「フランス革命」と題された1枚。
これは1989年のフランス革命200周年を記念して
当時沢山の名演を残したブトリーの指揮で、
フランス革命当時のマーチを特集した CD。
ギャルドは、今でこそパレードは行わないコンサートバンドですが、
ギャルド、つまり英語のガード、という名前が示す通り、
元々は国王所属の「近衛兵」が起源で、
革命後共和国の「国民衛兵隊」として発展してきたわけですから、
当時からのレパートリーを沢山有しているはずなのです。
なので、ギャルドの優れた演奏を収めたディスクは多数ありますが、
革命当時の音を収めたこのディスクは「おお!」と迷わず購入。w

中でも、フランスのマーチと言えばみんなが知ってる
「ラ・マルセイエーズ」、フランスの国歌でもあるわけですが、
これを歌う国民的歌手のミレイユ・マチユの歌が圧巻、
私にはドラクロワが描く自由の女神が降臨したかのような
そんな感動を呼び起こす熱い演奏なのです。
このディスク、録音が1988年の7月、
つまり200周年の1年前の、正に革命の月に行われていて、
マチユやブトリー以下、演奏に携わった一人一人の思い入れは
並々ならぬものがあったのだろうと思います。
とにかく熱気に満ちた凄い演奏。

もう1枚は——正確には2枚組なのだけれど——
カラヤン指揮のベルリンフィル吹奏楽隊によるマーチ集。
カラヤンとベルリンフィルの組み合わせと言えば
どんなに華々しく、輝かしい響きを聞かせるかと期待すると思います。
実際、レコード時代はこんなジャケットだったようです。

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すごいですねー。燃えています。
そして、第三帝国時代の映像を見たことがある人には
ドイツ国民全体を戦争に駆り立てた熱い音楽を思い起こすでしょう。
しかし、実際に演奏を聞いてみると、もっとおっとりとしていて
このジャケットのイメージとは全く異なると言ってよいのです。

このディスクには「ドイツ行進曲集」の邦題が付いてたりしますが
それがそもそも誤訳です。
「ドイツ行進曲」というと、やはり僕等は第三帝国時代の
音楽を思い起こすのではないでしょうか。
このジャケット、誰が描いたのかは知りませんが、
何となくドイツ語の吹奏楽隊を意味する "Bläser" から
英語で「燃える」を意味する "blaze" を連想したように想像します。
原題は「プロイセンとオーストリアの行進曲集」というのです。

これは、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム3世の命で
編纂されたプロイセンとオーストリアの行進曲51曲から
30曲をセレクトした録音で、即ち、ヒトラーの第三帝国より
ずっと以前、古式床しき軍楽の伝統の記録なのである。
僕が購入した CD のジャケットの方がその本質を表しているように思う。

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先のフランス革命集同様、CD 2枚に収められた30曲の殆どは
僕の知らない曲で、知ってる曲と言えば
プロイセンのタイケ「旧友」と
オーストリアのヴァーグナーによる「双頭の鷲の旗に下に」位だが、
この「双頭の鷲」は僕がセカフェスの時誤ってドイツの曲と紹介したが、
この曲はじめ全体にオーストリアの曲の方が華があってカッコイイ。

そう言えば、このディスクの録音は1973年だが、
この年カラヤンは、僕が持っているものだけでも
R・シュトラウスの「ティル・オイレンシュピーゲル」、
「アダージョ」が有名になったマーラーの「交響曲第5番」、
シェーンベルク他新ヴィーン楽派の管弦楽曲集と
オーストリアの作曲家の音楽を精力的に録音している。
この行進曲集もそうした彼のオーストリアプロジェクトの
一環ではないか、と僕は感じるのです。
カラヤンはオーストリア人としての出自に生涯拘ったと言います。
故あってヴィーンフィルとは袂を分かったわけですが、
プロイセンのベルリンフィルを振りながらも
彼が表現したかったったのはオーストリアの、
或いはヴィーンの豊かな伝統だったのかもしれません。

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