10月2日(木)は上野の東京文化会館小ホールで行われた
熊本マリさんの夜会コンサートに行って来ました。
熊本マリさん、10歳の頃からスペインに渡って
王立マドリード音楽院に学び、その後ジュリアード音楽院や
イギリスの王立音楽院で学んだという
超エリートコースのピアニストの方でどこか遠い存在でしたが、
2022年に SL 内の特設会場で行われた第5回セカフェスに
In Yan(三淵啓自)先生のご紹介で登場、
僕らの前でピアノの演奏だけでなく
楽しいおしゃべりも披露して頂いてぐっと近い存在になりました。
グレン・グールドとの手紙のやりとりや、
ピアニストがステージの上でどんなことを考え、感じて
曲を弾いているのかといった話はとても興味深く、
この人の演奏をもっと聴いてみたい、とその時思ったのでした。
が、身の回りの雑事にかまけてか、その後ずっと機会を逸していて、
今回もホント直前で、あ! 10月2日ならスケジュール空いてる!
と気づいてチケットを申し込んだ次第でした。


東京文化会館というのはいろいろと思い出深いコンサートを
経験した場所で、僕はここの大ホールの響きがとてもすきなのです。
が、そう言えば、自分はピアノ音楽が大好きなのにも拘わらず、
クラシックのピアノ・ソロのコンサートって
あまり行ったことがないことに気づきました。
従って、小ホールで音楽を聴くのはこれが初めてだったのです!


プログラムを受け取って席に着くと、流石に直前に申し込んだので
席は端っこの方、P-60 でしたが、何と、端っこなだけに
この席からは演奏者の顔がよく見えるよい席ではないですか!
手許こそ見えませんでしたが、熊本マリさんの演奏する様子を
たっぷりと拝ませて戴くことができました。^^
さて、演奏会はバルバトールという僕の知らない
フランスの作曲家の「ロマンス」で幕を開けますが、
聴いているとどこか僕の好きなフランスの作曲家、F・クープランの
クラヴサンの曲の響きがあります。
それもそのはず、MC でマリー=アントワネット妃に
クラヴサンを教えた人であることが告げられわかりましたが、
クープランと並ぶクラヴサン音楽の大家、
ジャン=フィリップ・ラモーの弟さんに師事した方なのだとか。
まだ長調と短調とかはっきりと分かれていない時代の
きめと言うのかあやと言うのか、細かく表情が移ろう
典雅なフランス古典音楽の響きがピアノで蘇る演奏でした。
続いては、これも僕の好きなスカルラッティの曲を2曲。
スカルラッティはイタリア生まれではありますが、
後半生はスペインで過ごし、スペインで没していますので
僕自身はスペインの作曲家だと思っていて、
そのスカルラッティをこれまたスペインとのつながりの深い
熊本マリさんが弾くのを楽しみにしていました。
期待通りの明るい響きの素晴らしい演奏。
プログラムには「スペインの熱い夜 情熱のリズム」
とありましたが、この前半はスペインの他にも
フランス、イタリアの作曲家たちの曲をとりあげていて、
フランスでは先のバルバトールの他に
僕がかなり影響を受けたドビュッシーの曲も3曲弾かれました。
まずは「月の光」から。
この曲はいろんな人の演奏で何度も聴いていて
セカフェスに出演された時にも弾いて頂きましたが、
あれ? と思う不思議な演奏でした。
何だかこれまで聴いてきたのと違う、
より明るくくっきりとした響き。
先ほどのスカルラッティにも通ずるスペイン的な響き、
とでも言いましょうか。
これはセカフェスの時の演奏では感じなかった
とても新鮮な響きでした。
2曲目の「小さい黒人」を挟んで最後の「ヴィーノの門」は
勿論スペイン色の強い曲。
ドビュッシーは一度もスペインを訪れたことがないにも拘わらず、
『イベリア』という管弦楽曲も書いていますし、
この国への憧れのようなものがあったのでしょうか。
何故これらの3曲が選ばれたのか、あとになってわかる気がします。
話は全然関係ないですが、イタリアからの曲として
プッチーニの「電気ショック」が取り上げられていたのは
面白かったですね。
歌劇で有名なプッチーニにこんな曲があるとは知らなかった。
さて、ステージの後半は山本将光さんと山本涼さんの
踊りとパルマ・パーカッションを交えて繰り広げられます。
ただでさえ熱い響きの楽曲に手拍子やらカスタネットやら
足を踏みならすサパテアードやらが入って来ると、
会場はタイトル通り「スペインの熱い夜」になります。
客席も含めて会場を大きく使った闘牛の演出もおもしろかった。
会場からは「もっと、もっと」の声が止まなかったですね。
本当に楽しいステージでした。
会場では CD を販売していましたが、どれにするか迷った挙げ句
買わないで帰ってきました。
熊本マリさんと言えばやはりスペインものを聴きたい。
でもドビュッシーやサティも興味があるし、
セカフェスでバッハの『ゴルトベルク』の7番を弾いていた
あの美しい響きが忘れられずバッハの他の演奏も聴いてみたい。
となると、どれか1枚に絞るのは無理なわけで、
何れこれら全部買うことになるんだろうな、と思ってる次第。w
ここ数年、CD ではクラシックの曲をいろいろ聴いていますが
生のコンサートは久しく訪れていなかったことに
改めて気付きました。
行っても大体は管弦楽に偏っていて、
ピアノ・ソロのコンサートは特にそそられる企画でない限り
行く機会を逸していることが多いようです。
それだけに、2022年に SL 内でお会いして以来
ずっと気になっていた熊本マリさんのコンサートに
今回参加できたのは本当に貴重な体験でした。
また次の機会を楽しみにしています。
ありがとうございました。
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