2020年6月7日日曜日

【RL】そりゃぁないよ、IK さん〜今更ですが Syntronik の楽しみ方

シンセサイザーの往年の名機が PC 上でソフトシンセとして再現され
DAW 上で利用されるのはごく普通になっていますが、
実機のルック&フィールを意識したものとしては、
フランスの Arturia、UVI、そしてイタリアの IK Multimedia
といった会社のものが人気を競っていると思います。
Arturia が発音のロジックそのものを再現してリアルな操作感と
音色を実現しているのに比べ、
UVI と IK Multimedia は実機の特徴的な音をサンプリングし、
そのサンプリングした音を実機のルック&フィールで加工する、
そんな違いがあります。
当然のことながら、サンプリングベースですと、
サンプリングされた音以上のことをやるのに限界があるので、
できるだけたくさんの音色を用意する必要があり、
当然ディスクスペースもたくさん必要になります。
例えば、オーバーハイムの名機、OB-Xa で言うと、
Arturia の 1GBに対して、IK Multimedia は 4GB 必要です。
そんなところが僕が Arturia のシリーズを使っている
一つの理由でもあります。

そうそう、それでそのオーバーハイム OB-Xa なのですよ。
つい最近、Arturia が OB-Xa を再現したソフトシンセ
OB-Xa V を発売したのです。


OB-Xa と言ってもピンと来ない方も多いかもしれませんが、
ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」という曲の冒頭奏でられる
あの印象的なリフのブラスサウンド、と言えば
どなたにも心当たりがあるのではないでしょうか。
オーバーハイムと言えば、オーバーハイム・サウンドと呼ばれる
分厚い音色で知られていますが、この OB-Xa はその集大成と言える
フラッグシップモデルでしたね。
なので、これまで Arturia の V Collection シリーズに
入っていないのが不思議なくらいなのでした。
V Collection シリーズには、もう一つのフラッグシップモデルである
Matrix 12 は入っているものの、オーバーハイムのモデルとしては
OB-Xa でなく、最も初期の SEM しかなかったですから。

一方、IK Multimedia には、2017年に発表した Syntronik という
これまた往年の名機をサンプルしたシリーズがあって
その中にも OB-Xa は既に含まれていました。
この Syntronik は、Arturia や、オリジナルのシンセメーカーが
対応していないような機材も含んでいるので、
僕はソフトシンセの種類が少ない iPad や iPhone に入れて
使っていました。
例えば、ローランドの Jupiter-8, Juno-106, JX-10, SH-2, TB-303
といったものが含まれているんですね。
そして、その IK Multimedia がこの度、ニュースレターに登録すると
OB-Xa の Syntronik 版、OXa を無償配布するよ、
というキャンペーンを打ち出して来たのです。


IK Multimedia と言えば、少し前に Cinematic Percussion の
無償配布キャンペーンを行ったばかりで、
IK の登録ユーザーのヒロシもダウンロードさせてもらいました。
しかし、Arturia が新製品を発売してきたこのタイミングでの
プロモーション、そりゃぁないよ、IK さん! という感じですね。

とは言え、僕も V Collection のアップデートで OB-Xa V が
入って来たらそちらを購入するかもですが、
折角の機会なのと、Syntronik については
前から書こうと思っていたので、今回ダウンロードついでに
Syntronik の使い方や特徴についても触れてみたいと思います。

まず、Syntronik の画面から OXa を選択するとこのように
ズラリと音色のリストが表示されます。

200607a

上に書いたように、OB-Xa と言えば「ジャンプ」なので、
トップには「1984 Polysynth 1」「1984 Polysynth 2」と
それを思わせる音色名が並んでいますね。
(蛇足ですが、「1984」は「ジャンプ」が入ってる
 ヴァン・ヘイレンのアルバムの名前ですね。)
実際、これらの音色を選んであのフレーズを弾くと。。。
はい、期待通りのあの音でした。^^

で、普通はここに並んでるさくさんの音の中から
選んで弾けばいいのですが、中には僕のように
もうちょっと作り込みをしたい、という人もいると思います。
そんな時は、次の画像のように「Filters」の「Timbre」で
「Basic」というのを選びます。

200607b

この Basic を選択した状態で表示されているのが、
OB-Xa からサンプリングされた素の音です。
そのサンプリングした時の状態がそのまま音色名になってます。
例えば、画面では「PWM 1-Osc OXa Fast」は、
オシレータに LFO を使って PWM をかけている状態で、
その時の LFO のスピードが速い状態でサンプリングされてます。
その少し下にある「Saw+PWM Sqr 5th」は、
1つのオシレータはノコギリ波、もう一つはPWMをかけた矩形波で
この矩形波の方をノコギリの方に対して5度上にデチューンしたもの。
こんな感じで自分の作りたい音の設定に一番近い音色を選びます。

200607c

音色を選んだあと、画面トップの音色名が書いてある
ボックスをクリックすると上の写真のような画面に切り替わります。
ここで細かい音色の調整をするのですが、
おー、いかにも OB-Xa らしい画面に見えますよね?
ところがどっこい、ここが Arturia の V Collection と違うところで
OB-Xa だろうと Jupiter-8 だろうと SY-99 だろうと、
背景はそれぞれの実機を思わせるものながら、
表示されているパラメータは全機種共通なのです!w
ここがSyntronik の使いやすいところでもあり、限界でもあるわけ。
つまり、エディットしたい内容って、結局のところ、
フィルター、エンベロープ、モジュレーションのかかり具合、
大体そんなところに尽きるでしょ、っていう割り切りですね。
割り切りなんだけれども、フィルターの調整ロジックがよく出来てて
例えば僕は Juno-60 でいろいろ試しましたが、
自分に作りたい音を再現することができましたから、
これはこれでなかなかのものだと思います。
サンプリング侮れじ、という感じですね。

フィルターについて触れたところで、ここもまた Syntronik の
他にはない強みになるわけですが、
上の画像ではちょっと見づらいかもですが、画面中央ちょっと右寄り
フィルターセクションに「Type」というツマミがあります。
これ、タイプ名にOとかCとかRとかMとかあるのですが、
実は、O は Oberheim、C は Sequential Circuit、
R は Roland、M は (Mini) Moog を意味していて、
それぞれのメーカーのフィルターの動きをシミュレートしているわけ。
なので、例えば OXa はオーバーハイムのシミュレーションなんだけど
そこにローランドやモーグのフィルターを適用して
実機ではできないはずの音作りができるというわけなんです。
実は、このフィルタータイプを変えるだけで結構音変わるので
いろいろ試してみるとサンプリングを超えた音作りができる、
そんな風に思います。

そんなわけで、Syntronik のシリーズは、
OB-Xa のあの音が欲しい、とか Juno のあの音が欲しい、
というニーズには十分応えられ、エディットも可能で使いやすい
そんなソフトシンセだと思っています。
ご興味のある方、是非この無償キャペーンで試してみては?

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