2023年6月8日木曜日

【レビュー】 最近観た映画・その1〜「レフト・ビハインド」

僕をよくご存じの方なら、僕が SF 好きであることは
ご承知のことと思います。
僕の友だちには SF は嫌い、という人もいます。
ただの荒唐無稽な作り話と考えるときっとつまらないでしょう。
事実、宇宙人がやって来たり、モンスターが現れて暴れたり
といった映画の殆どはあまりにも類型的でつまらない。
「スターウォーズ」や「スタートレック」のシリーズだって
西部劇の舞台をただ宇宙に置き換えただけでしょ?
と言われてしまえばそれまでです。
そこには「宇宙が舞台」ということ以外に
Scientific 「科学的」なものは何もないかもしれません。

しかし、SF とは元々は「Science Fiction」と呼ばれていましたが、
アーサー・C・クラークのような人が出てきてから
「Speculative Fiction」、つまり「思弁小説」とも呼ばれています。
それは「もしこういう状況に置かれたら自分はどうするだろうか?」
という、哲学的思考実験と言えるものです。

こうして僕が SF 映画を結構観ているからでしょう、
Amazon Prime の「お勧め映画」に「レフト・ビハインド」が
何度も繰り返し上がって来ていました。
しかしそのポスターから取ったと思われるサムネールがねぇ。。。
主演のニコラス・ケイジの情けない顔と
空中で爆発しているらしい飛行機の絵なんですよね。
ああ、またニコラス主演のパニック映画か、ぐらいしにしか
捉えていなくていつもスルーしていたんですよね。

でもある時たまたまカーソルをロールオーバーして
見えたあらすじが、地球上からたくさんの人が消えた、という話。
ムムム! と思ったのです。
人が消えるという話、そして「レフト・ビハインド」、
つまり「取り残される」という意味のタイトル。
もしかして! と思ってみたらやっぱりそうでした。

人類滅亡、という SF 映画は多いのですが、
大体が宇宙人が攻めて来る、自然環境が壊れる、
宇宙から小惑星や彗星が直撃する、といった話が殆どで、
その意味ではこれはとてもレアな映画です。
これは、聖書に描かれている「携挙」をテーマにした作品なのです。

「携挙」という漢字も、「ケイキョ」と音にしても
あまり耳慣れない言葉なのではないでしょうか。
それもそのはず、これは聖書のある一節に書かれていることを
信じている人たちから生まれた終末思想だからで、
キリスト教にあまり馴染みのない日本人の方々には
全く以てピンと来ない話でしょう。
この「携挙」という言葉は英語の「Rapture」、
すなわち「連れて行かれる」という言葉の翻訳語なのです。

具体的には、新約聖書の「テサロニケの信徒への手紙」の
第4章に記載されている内容によります。

「すなわち、合図の号令がかかり、大天使の声が聞こえて、神のラッパが鳴り響くと、主御自身が天から降って来られます。すると、キリストに結ばれて死んだ人たちが、まず最初に復活し、
それから、わたしたち生き残っている者が、空中で主と出会うために、彼らと一緒に雲に包まれて引き上げられます。このようにして、わたしたちはいつまでも主と共にいることになります。」
(新共同訳「テサロニケ信徒への手紙」第4章16・17節)

そうなのです。
この世の終わりに主とイエス=キリストを信じる人々が
この世から天に連れて行かれる、というのです。
キリスト教を信じている人たちにとっては
それはとても幸せなことでしょうが、それが本当に、
現実にこの世界で起こったらどうなるでしょう?
飛行機からはパイロットが消え、空港からは管制官が消え、
電車やバスの運転手、警察官や消防士、病院の医師などが
突然目の前から消えてしまったらどうなるでしょう?
そう、天に召されずに「残された(left behind)」人々は
一体どうなるのでしょう?

ニコラス・ケイジは結構 B 級 SF 映画に出演していて
それも大抵は情けないお父さん役だったりするのですが、
この「レフト・ビハインド」でもそう。
急に宗教に目覚めた奥さんは天に召されますが、
あまり宗教を信じていないニコラス・ケイジとその娘は
空の上と地上とでそれぞれ大変な目に遭いながら
映画の最後では再会します。

危うく飛行機墜落の危機を免れた乗客たちは
「よかったよかった助かった」と喜び合いますが、
ニコラス・ケイジの娘は言うのです。
「これで終わったわけじゃない、これからが大変なのだ」と。
そう。携挙を信じる人たちの間では、
残された人々には7年に渡ってあらゆる災害が降りかかると
そう信じられているのです。

イエス=キリストは預言通り復活しました。
そしてもう一度この世の終わりに現れると言われています。
その時、本当に携挙ということが起こるのでしょうか?
そしてもし本当に起こったら。。。
そういう思考実験をビジュアルで見せてくれる映画です。
最初に書きましたようになかなかレアな設定、
かついかにもつまらなそうなサムネールでスルーしそうな映画なので
敢えてお勧めさせて戴きます。^^


P.S. B級言いながら、情けない言いながら、
結構ニコラス・ケイジ主演の SF 映画観てるんですよね、これが。w

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