10日ほど前、8月27日(水)はわざわざ会社を休んで
豊洲でやっている「ラムセス大王展~ファラオたちの黄金」
という展覧会に行って来ました。
ラムセスの名前を持つ王様は何人もいますが、
「大王」と言えば勿論、エジプト新王国第19王朝
三代目のファラオであるラムセス2世のこと。
この展覧会はそのラムセス2世にフォーカスしたものですが、
僕は今年の初め、楔形文字やヒエログリフの勉強をしていて
改めて古代エジプト文明に関するナショナルジオグラフィックの
番組などを見てしばしその魅力に取り憑かれていたのでした。
いや、勿論古代エジプトのことは今更知ったわけでなく、
僕の人生の中で何度も繰り返しブームが訪れるわけです。w
そんな折にこの展示会が日本にやって来ましたからね、
これは行かねば、と思った次第なのです。
で、最初は友だちと一緒に行こうと思っていたのですが、
なかなか都合がつかず、9月7日までの会期の終わりが近づいたので
漸く会社休んでまで行っていた、というわけなのです。
ラムセス2世と聞いて、ピンと来る人はピンと来る。
知らない人は全く知らないかもしれない。
知らない人に「ラムセス2世ってどんな人?」と聞かれたら、
何と答えたらいいでしょうか?
紀元前14世紀頃のファラオで、カルナック神殿や
アブ・シンベル神殿を造った人で、ヒッタイトと戦って
世界史上最初の平和条約を遺した人で、
90歳くらいまで生きて、100人以上子供がいた人で、
もしかしたら『出エジプト記』でモーセと対峙した
あの王様ですよ。。。とでも?
こう書いてみると、やっぱり知っている人には、おお!
という感じでしょうけれど、知らない人には
ただの文字の羅列にしか過ぎないかもしれない。
そんなわけで、一体この展覧会に興味を持つ人が
どれくらいいるのだろう? 昨年末から今年の初めにかけて
国立西洋美術館でやっていた「モネ 睡蓮のとき」に比べれば
知る人ぞ知るという感じのマニアックな展覧会ではないか?
確かに土日は予約でいっぱいのようだけれど、
水曜日の午後だったら空いているんじゃないか?
その程度の認識で会場に向かったのですが。。。
会場に到着してビックリ!
時間指定推奨の展覧会なのに、入場の列が何重にも折り重なって、
こんなに並んだのは昨年のモネの時以来でした。
写真にある通り午後の日差しが強く、
私も含めてみんな傘を差して並んでました。
今回の展覧会は実に立体的な構成で面白かったのだけれど、
まず、会場に入ると、階段を降りて暗い部屋に辿り着きます。
恰も王の墓にでも入って行くような演出で、
もうこの瞬間からザワッとした空気になります。
で、その暗い部屋の突き当たりには扉があってここで待たされます。
扉の向こうはホールになっていて、約4分半の映像を見せられます。
当時のエジプトがどのような状況だったか、
そしてラムセス2世はどのような王だったのか、
謂わば映像によるイントロダクションで、
ここで展示会に対する気持ちを盛り上げてくれるわけです。
そして映像が終わるといよいよ次の間への扉が開いて
展示会場に入って行くわけですが、その扉の正面で
真っ先に迎えてくれるのがメンフィスで見つかった
12メートルもあるラムセス2世の像の頭部で、
この像はエジプトの歴史博物館でも入場すると
真っ先に観客を迎えてくれるそうで、
今回の展覧会でも最初に私たちを迎えてくれたのでした。
展示会場では王にまつわる品は勿論、オベリスクの頭部やら
戦いで使った弓などの武具や戦車を飾った金箔やら
王家の墓から出土した様々な遺品が展示されていました。
何と写真撮影自由なので、みんなバシバシ撮ってましたね。
僕は、お! と思ったものに限りましたが上の写真はその一つ。
胸飾りは何かすぐわかるでしょうが、
その下中央にあるのがブレスレットで、
その両脇にあるのはイヤリングなんですが、
特に右のイヤリング、片方だけですが、ブレスレットと比較しても
その大きさがわかると思います。
エジプトの王女はこんな大きなイヤリングを耳に付けてたんだと
目を見張りました。
それから、動物のミイラにも驚きましたね。
猫やらワニやら何れも神聖な動物がミイラにされたようで、
あの、日本ではフンコロガシと呼ばれている小さな虫
スカラベまでがミイラにされているのには参りました。
さて、こうした展示物の間に、要所要所で映像が流れていました。
アブ・シンベル神殿やネフェルタリ王妃の墓の様子などが
恰も自分たちがその場に入って行くようなアングルで流れていて
とっても臨場感があるのです。
中でも、ヒッタイトとのカデシュの戦いは
その様子をプロジェクションマッピングで体験する
部屋が用意されているくらいで、とても迫力がありました。
先ほどの動物のミイラのところでは、その解説映像も流れていたり
その場身を置いて居るだけで当時のエジプト世界が体感できる
そんな展示会になっていましたね。
そしていよいよご対面です。
写真はラムセス2世のミイラが収められていた棺です。
とても美しいですね!
そして、この棺が置いてある部屋では、
ラムセス2世のミイラから30代と80代の時の顔を
復元する映像が流れていました。
次の2枚はミイラの顔と、復元された30代頃の顔です。
なるほど~。逞しい感じのする顔ですね。
さて、展示会場を出ると物販のコーナーと VR のコーナーが。
VR ブースでは、ヘッドセットを付けて椅子に座るのですが、
この椅子が回転したり上向きになったりするのです。
ホログラムで現れるラムセス王妃ネフェルタリの案内で
アブ・シンベル神殿やネフェルタリの墓の中に
連れて行ってくれるのです。
まぁ、人間の視覚というのは不思議なもので、
目に飛び込んで来る映像で実際に前に移動したり
後ろに下がったりするような体感があってこれはスゴいです。
入場券とは別料金ですが、折角行くのなら
この VR も体験することをお勧めします。
こんな感じで展覧会を十分楽しんだあとはお決まりのコースで
図録を買って帰ろうとしますが、何と 7,500円の超豪華本!@@
さすがにちょっと迷いましたが、結局購入しました。
400ページもあるズシリと重い本で、単なる図録を超えて
古代エジプトの詳しい解説書になっていると言えます。
この図録には QR コードが付いていて、買った人だけが
専用のサイトで写真や映像を楽しめるようになってます。
想定外の出費でしたが、これがあるのでまぁいいか、と。w
そんなこんなのラムセス大王展、
9月1日には来場者が25万人を超えたとのことで、
9月7日までだった会期がいきなり4か月延長され、
来年の1月4日(日)までやることになったそうです。
僕と同様、主催者側もそんなに人が来てくれるとは
思ってなかったんじゃないかな。
何かね、冒頭に書いた通り、今時古代エジプトなんて
マニアックだよなぁ、と思っていたら
これだけの日本人が古代エジプトに関心を持っているということが
とてもこの国に希望があるように思うんですよ。
そうそう、水曜日の午後にどんな人たちが来てるかってね、
夫婦連れや年輩の女性の友だち連れは勿論ですが、
親子連れ、若い男の子たちのグループ、若い女の子たちのグループ、
学生風の人たち、ありとあらあらゆる人たちが来てて、
特に若い人たちが多いのが希望かな、と思ったのです。
古代エジプトって、ピラミッドに見られるように
現代の技術では不可能な建築を遺しているけれど、
現代の科学が行き詰まって、このままでは人類は
この惑星(ほし)を滅ぼしてしまうかもしれないって
ゼロカーボンとか SDGS とか言われている昨今、
もしかしたら今まで歩んで来たのとは異なる科学や技術が
古代エジプトにはあるのではないか?
そうだとすれば、この展覧会を観た若い人たちの中から
科学でも技術でも芸術でも、新しい時代の何かを
創る人たちが現れてくれるかもしれない、とね。
いやいや、若い人たちばかりに期待しないで
僕自身、明日のために何かをしないといけないのですけれどね。
古代から未来へ。
そんなことも考えさせられた「ラムセス大王展」でした。
会期が延長になったので、是非皆さんにもお勧めします。